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梅本先輩。6※
「コーヒーでいいですか?…あとは…水くらいしかないですけど。」
「じゃ水ちょうだい。」
冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出しコップに注ぎ、残りをケトルに入れてコーヒー用の湯を沸かす。
コップを差し出しながら、先輩の隣に、一人分のスペースを空けて座る。
「先輩、酒結構飲んでましたけど、大丈夫なんですか?って言うか、飲める歳なんですよね?」
「うん?うん、まぁあんまり強くないけど。先月誕生日来たからハタチだよ。」
結構落ち着いてて大人な雰囲気だったから、一浪とかしてるのかと思ってたけど、まだ二十歳になったばっかなんだな。
すると、先輩が、唐突に尋ねてきた。
「松井くんって彼女とかいないの?」
「彼女はいないですよ。」
彼女はと言うところが気になった。そしたら、やっぱり次の質問が来たんだ。
「へえそうなんだ。んじゃ、彼氏は?」
やっぱりそういう事だったんだ。
先輩が座る距離を少し詰めてくる。すごく距離近い。それから俺のほっぺたに手を当ててくるから、変な気持ちになってきて、自分でも目の奥に熱が籠もって来るのがわかった。
熱い目で先輩を見つめながら
「俺は構わないですけど…俺男ですよ?…」
と念押ししてみるけど、その言葉に先輩が、知ってるよなんて事も無げに言って顔を近づけてくる。ドキドキと心臓は煩いのに、心の中では、あぁ来たなって、案外冷静に考えていた。考えてみれば、帰り道でも俺自身少し期待してたのだから。
触れた唇は思ったよりも乾いていて、でも柔らかくて熱かった。互いの荒い息遣いと唇が触れては離れるチュッチュッという音が部屋に響く。もう止めることは出来なかった。
そのまま先輩に押し倒されて、シャツの中に入ってきた熱い手に素肌を触れらると、その場所から全身に熱が伝わっていく。お互いにシャツを脱がせあって、抱き合った。触れ合った肌が心地よい。ゾクゾクするような快感が全身を駆け抜けて、先を急ぐ様に、互いのベルトに手をかけたが、早く早くと焦る気持ちとは裏腹に、中々バックルが外れない。もどかしさを感じながら着ていた物を全部脱ぎ去った頃にはお互いのモノは完全に勃ち上がっていた。それを、先輩の大きな手が二人分を合わせて持って、同時に擦り上げると、今までに感じたことの無いような快感が襲ってくる。
唇も舌も、先輩に触れられたペニスも、触れ合っている場所全てが溶けて一つの塊になってしまった様な錯覚を引き起こすくらいに満たされた気持ちだった。
女子としか経験がない先輩と、高3の時に何となく付き合ってた人と数回しか経験がない俺では結局、最後までは出来なかったけど、めちゃくちゃ興奮して、温かくて、先輩の事が好きになりそうだなって思っていたんだ。
それなのに翌朝目が覚めると、先輩はもう帰ってて、テーブルの上にメモが一枚置いてあるだけだった。
『ごめんな。梅本』
何で?何を謝るかなぁ…何なんだよ。悔しい。
確かに先輩だし、迫られて断れなかったけど、俺だって嫌だと思えば殴ってでも止めさせる腕力もある。でも、それをしなかったのは先輩を受け入れたからだ。別にノリと勢いだったとして、謝られる筋合いはないはずだ。馬鹿らしくなったと同時に無性に腹がたった。でも、連絡先も知らない。サークルのメンバーでもなかったから、名簿にも乗っていない。こちらから連絡したいとは思わないけど、顔を見ることがあれば、一発殴ってやりたいくらいだ。
でも、それから二週間ほど過ぎたある日、女子二人組を通して先輩から連絡が来たんだ。
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