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しつこい人 2

そんなある日、学食の隅でレポートを書いていたら、河合さんがやって来た。 「松井くんじゃない!久しぶり!」 相変わらず元気だ。 「何か元気ないみたいだけど、どうかした?もしかして、梅本先輩と喧嘩でもした?」 河合さんの的確すぎる問いかけに、飲んでいたコーヒーを吹いてしまった。なんで分かるの?そんな顔をしていたのかな…って思ってたら河合さんが笑って言った。 「顔に書いてあるよ。」 実際そんな事ある訳ないのに、頬を手で擦ってしまう。そんな俺を見て、河合さんがケラケラ笑った。 「河合さん、付き合ってる人いないよね?」 「何よ、その決めつけ止めてくれるかな?しかも唐突な!今の話と関係ある訳??」 「あぁ、めんごめんご…」 「っ!何その寒い感じのヤツ」 何か、河合さん和むな。まぁ、河合さんをからかって和んでんだから、いい趣味ではないけど。 前に俺に告白した時は、先輩に威嚇されて逃げ出しちゃった河合さんだったけど、その後はフツーに友達として付き合いがある。同じ講義も多くて、昼飯もよく一緒に食べたりする中だ。女の子って全体的に苦手だけど、河合さんは特別。いい友達って感じで、さっぱりした性格の良いやつなんだ。ちょっと強引だけど。 「で、何で元気ないの?」 改めて聞いてくれたから、ここ数日のことを掻い摘んで話してみた。俺が喋ってる間は余計な口も挟まないで、たまに相槌を打ちながら聞いてくれる。こういう所も付き合いやすいなって思う。 「へぇ、そうなんだ~。梅本先輩って面倒くさい人なんだね。あははは」 面倒くさい…か。確かにね。 楽しそうに笑ってるけど言葉は辛辣だ。 「大体、何でそんなに聞きたいんだろうね。自分が浮気したの棚に上げてさ、人の過去なんて知ったっていい事ないよね。好きな人なら尚更ね。私はムリ!聞きたくないわ。」 「河合さんって何んか………………」 「んん?何?」 何でそこで凄むかな…怖いんですけど? 「イヤ、大人だなって思っただけ。あと、優しいなって」 「あぁ!あぁ、そういう事…あはは、暑苦しいとか言われるかと思った、あはははは!」 照れているのがちょっとだけ、可愛く見えた。笑い方は豪快だけどね。 「まぁさ、逃した魚は大きいっていうじゃない?残念だったねー」 「ん?なんの事?」 「私の事。大人っぽくて優しくて理解のある女を振った事言ってるのぉ。もう付き合ってる人いるし〜」 「えええええ?そうなの?ゲテモノ食いって奴?えっえっ?誰?俺も知ってる奴?」 「っっ!とことん失礼な奴!もう話聞いてあげないよ!」 って笑いながら言う河合さんに更に和んで、少し気持が楽になった。その後暫く喋って、河合さんは講義があるからか、と教室に移動してしまった。 再び一人になった俺は、もう一度先輩と話をしてみようと思った。興味本位で聞いてる訳じゃないだろうし、なんでそこまで聞きたいのかも気になる。こちらから話を聞けば先輩の気持ちも変わるかもだし、うまく行けば分かってくれるかもしれないと思ったんだ。  先輩と話をする為に、サークルにも顔を出さないで、家に早く帰ってきた。それから濃いめのブラックコーヒーを淹れてマグカップに注ぎ、今は先輩専用になっているソファーに座って待つ。 間もなく玄関が開く音がして、部屋に入った先輩がソファーに座る俺を見てぎょっとした。その顔があんまり間抜けで面白いから、思わず吹き出したけど、それ以上笑わないように口元を抑えて下を向いた。 先輩の顔を見て笑った俺を睨みつけて、今度はムッとした顔をしてボソリと不機嫌に言う。 「俺のソファー…」 だってさ。めちゃくちゃ不満げに言ってるよ。かわいいんだよな、こう言う子供っぽいところ、ホント好き。…けど、やばい、本題忘れてた。この話、しなくて済んだらどんなに気楽だろうと思いながら俺は口を開いた。

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