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言い訳 5

 ここまで来ると、すっかり観念して、質問されるがままに全て喋ってしまう。さらに、話を聞く和輝の態度が落ち着いていて、怒ってる様に見えなかったから、恋バナでもするように、つい、沙奈絵の可愛さについて語ったり、ベッド上の会話なんかも正直に話してしまった。 「へぇ。先輩、そういうのが好きなんだね…」 と和輝は寂しそうな顔で俯いた。喋りすぎたなと気付いた時にはもう遅かった………。和輝は冷めた表情になって梅本に言う。 「先輩、今晩どうすんの?うちに泊まるの?それとも向こう?」 「泊まるって?ここ俺んちのつもりだったんだけど?」 「ああ~まあね…でも別宅もできた事だしさ。どうするのかなって思って。」 「お前ねぇ!そういう事言う?ちゃんとここに帰ってきたんだからさ…。」 そんな会話につい腹が立って勢いで反論したが、そう言えば先程別れて来た事をまだ伝えていなかったのだ。 「……実はさ…別れてきたんだ、昨日。ちゃんと話したよ、やっぱり今付き合ってる人の方が大事だって。だから、もう行かないし会わない。向こうにもそう言ってきたし、そのつもりだ。相手も…納得してくれた……と思う。」 「へぇ……………。」 と言った和輝は、今日の玉ねぎ、強烈だなと誤魔化してティッシュペーパーで目元を拭いた。暫く和輝の涙は止まらなかった。もちろん、それが玉ねぎのせいだなんて梅本も思っていない。でも和輝が誤魔化しているのだから、とそこは追求しなかった。 「ハンバーグの続き、作るかな…」 と言って梅本はキッチンに戻った。 それに続いて和輝もキッチンに入る。涙は止まっているものの、目も鼻の頭も真っ赤だ。が、梅本はその事には触れないで、黙々とハンバーグを作った、ひき肉にパン粉や先程の玉ねぎを入れ、塩コショウをして、スーパーで買ったスパイスを入れる。 和輝が独り言みたいに、いい匂いだね、と言った。それから丸めて空気を抜いた塊をフライパンに並べる。ジュッという音がして、肉とスパイスの香りが立った。 フライ返し片手に焼けるのを待ちながら、自分のバカさ加減にうんざりする。深くため息をついて、目を上げると、和輝の視線と重なった。 「ホントに終わりにしたの?」 「うん、ホント」 と答えた梅本に、和輝はぎこちないが、安心した表情をして見せた。 「じゃあ、飯にしようか?」 「うん、そうだね。」 やっと和輝のところに戻れるな…と梅本は思った。 それから数日経ったある日、梅本は大学で竹井沙奈絵に声をかけられた。 「今日の帰り、お時間ありますか?」 「無くはないけど、二人で会うのは…申し訳ないけど出来ないな。」 「家に来てとは言いません。途中のカフェとかで良いんです。お話出来ませんか?」 「それなら…まぁ」 と了承した。 後で連絡しますと言った沙奈絵が指定したのは、和輝ともたまに行くカフェだった。梅本が甘いものが好きだと話したら、和輝が連れてきてくれたのだ。本人は大して好きではないくせに、わざわざ友達に美味しい店を教えて貰ったらしい。そんな気に入りの店に沙奈絵と二人で行くのは躊躇われたが、今日で終わりなんだ、と自分に言い聞かせる。 店に入って見回すと、一番奥の席に入口に背を向けて沙奈絵が座っていた。それを見つけてカウンターでコーヒーを頼み、テーブルの間をすり抜けて梅本が席につく。沙奈絵が顔を上げてニコっと笑った。つい最近別れたばかりなのに、遠い記憶の中の出来事のような気がしている。 「梅本さんはケーキは頼まないんですか?」 と無邪気な顔で問いかけてくる。この子は状況が分かっているのだろうか…梅本は不安になった。 「いや、そんなに長居するつもり無いから…」 と断るが、私も食べたいのでとカウンターに注文しに行ってしまった。 「勝手に選んでスミマセン」 と誤りながらも嬉しそうにしている。こんな状況でケーキを食べたいと言う沙奈絵の気持ちが理解出来ない。が、沙奈絵がそれで気が済むなら良いかも知れないと思い直した。

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