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言い訳 8
家に帰るとソファーの上に身体を丸めて和輝が横たわっていた。テーブルにアルコールの空き缶が散らかっているのを見つけて慌てて名前を呼んで近寄ると、和輝がゆっくりと両手を差し伸べた。それを受け止めて抱きしめる。飲み過ぎたせいなのか、この暑さなのに体が冷え切っている。
「こんなに酒のんで…バカだな…。」
と独り言の様に言うと、和輝はギュッと抱きついてきた。それから梅本の肩口に顔を擦りつけて、首元ですっと息を吸うのが分かる。少し前ににおいの話をされた事を思いだして、ドキリとしたが、和輝の表情を伺うと、その目から涙が一筋流れ落ちた。気持ちの読み取れない表情をしているが、涙は後から後から溢れてくる。そんな和輝を見てたまらない気持ちになって、梅本も涙を溢した。
「ゴメンな、和輝に辛い思いさせたよな。でも、今度こそちゃんとしてきたよ。ちゃんと別れてきた。」
梅本の言葉にさらに涙を溢して、和輝はうんと小さく頷いた。梅本がいない間も泣いていたのだろう、瞼が腫れて目も赤くなっていた。
「ゴメンな。俺ホントにバカだった。」
「…うん」
いつもの勝ち気な和輝とは違う、不安そうな表情に胸を締め付けられる。伝えなくては、気持ちをちゃんと伝えなくてはいけない…梅本は募る気持ちを必死に言葉にする。
「俺には和輝だけだから…お前以外好きにならないって分かったから。だからまた一緒にいてくれる?」
「…うん」
信じてほしい。もう二度と寂しい思いをさせないから。今の言葉が唯一つの真実だから。
そして梅本は、和輝をそっと抱きしめた。
「ありがとう…愛してる」
「…うん…」
「愛してるよ…和輝」
「うん…分かった…」
「和輝も言って。」
「……うん分かったから、…あの…うん…また今度」
どんなに強請っても言ってくれない和輝に焦れったさを感じつつも、顔を赤くしながら恥ずかしがって、その一言を言えない和輝が堪らなく可愛い。
「和輝?照れてる?」
「…いや…」
「かわいいな、和輝。」
「いや、かわいくないって。」
「可愛いよ、和輝。愛してる?」
「…うん、分かったから!」
もうすっかりいつものペースだ。梅本は和輝はきっと、照れて言わないだろうと思っている。それでもしつこく和輝に迫ると抱きしめた腕から逃れようと身を捩りながら和輝が笑った。こういうところも好きなんだよなと思う。そんな和輝と、この先もずっと一緒にいたいと心から思った。和輝が照れながらも笑顔を見せたのが嬉しくて、梅本の顔も綻んだ。
すると、先程まで逃げ出そうとしていた和輝が動きを止めて梅本を抱きしめた。急に笑顔を引っ込めて、じっと梅本を見つめる。それからそっと耳元に唇を寄せて、囁くように言った。
「アイシテル」
突然の告白に驚いて、梅本は口をぽかんと開けて間抜けな顔をしている。が、我に返るとあまりの嬉しさに、大声で騒ぎ立てた。そんな梅本を見て和輝が呆れた顔をしている。
「え?和輝、マジで言ってくれたの?嬉しい、信じられない、聞き間違いじゃないよな?ねぇ、もう一度言って。心の準備出来てなかったから、ちゃんと…」
しかし、全てを言い終わらないうちに和輝の唇が梅本の唇に重なって、残りの言葉を飲み込んだ。
言い訳 終
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