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それから、 4

 高木さんの話で盛り上がっていると、隣に河合さんが来た。大学卒業後も河合さんとは何だかんだ繋がってる。いつだったか先輩の浮気のこととか相談に乗ってもらったりしていたんだよなと懐かしかった。今は2児の母になって、一段と貫禄がついている。 「松井くん、おめでとう。」 と笑顔で言う。 「長い付き合いだね。まぁこの先の方が長いんだろうけどさ。ちゃんと一緒になれて良かったよね。」 そう、しみじみ言ってくれる河合さんの表情が優しかった。 「大学一年からずっとだもんね。ホント、感動しちゃう。一時期は別れりゃ良いのにって思ったこともあったけど!」 そんなことキツイことさえ笑顔で言っている。容赦のない物言いも相変わらずだ。俺も負けずに、 「あの時、河合さんをお試しで選んでなくてよかったよ」 と言ってやると、あはははと、河合さんが笑って言えてるね、と言った。それから、感慨深げに 「松井くんと梅本先輩の愛は本物だったねぇ。」 といった。そうだねと返したけど、全くぶれなった訳ではない。人生山あり 谷ありっていうのかな。  二人とも学生だった頃は一緒にいられる時間が長かったから、それだけで安心していられたけど、先輩が就職してすれ違いが増えてから、少しずつ変わっていった。翌年、俺自身も働き始めて更に二人でいる時間が減ると、同じ家に住んでいると言うだけで、顔も合わさない日が何日もあったし、家にいても相手を思いやる余裕もなかったから、俺は別れる事を真剣に考え始めていたんだ。すれ違いに疲れて諦めて、解り合えない関係なんて無駄だと思っていた。でも先輩は違っていた。どんな時だって一所懸命俺と向き合おうとしてくれていた事が、今ならわかる。  先輩の気持ちを再確認したのは、俺が仕事の移動中に追突事故にあって、病院に運ばれた時だった。 車に同乗していた、上司の橋本さんが俺の携帯の履歴から先輩に連絡してくれたんだ。普通に考えたら、履歴の一番上にあったとしても男友達だと思えば連絡したりしないだろうけど、橋本さんもゲイで俺の事にも何となく気が付いていたらしい。携帯を見て察して、迷わず先輩を選んだそうだ。勘の良さが少し怖かったけど、本当にありがたかった。 事故の時、俺は助手席にいて、車を降りようとシートベルトを外したところだったから、追突された勢いでピラーに頭を強打してしまったんだ。それで病院に連れていかれて、検査を受けている所に先輩がやってきた。 橋本さんがどんな伝え方をしたのかわからなったけど、先輩がものすごく心配した顔して入って来た。車椅子に乗せられて出てきた俺を見つけると駆け寄ってきて、大丈夫なのか?って怒鳴るみたいに言ったんだ。怖いくらいの形相だったけど、ホントに心配してくれてるのが分かって、泣きそうだった。 仕事を全部中断して、駆け付けてくれた事が嬉しかった。内心、仕事と俺とどっちが大事なの?って思ってたりした時期だったから。俺の事をこんなに大切に思ってくれる人は、この先きっと現れないだろうって確信した。 そんな出来事があって俺自身、先輩とうまくやっていこうと思えるようになったんだ。 一生添い遂げるとなると、どちらか一方が想ってるだけじゃダメだし、相手に負けないくらい自分が相手を思わなくちゃダメなんだって今は思う。 こうして一つのベッドで一緒に眠れる存在が先輩だって事が嬉しい。隣で眠る先輩をまじまじと見ると、少し老けたかなって思うけど、毎日見ていると、小さな変化には気が付きにくい。あの頃のままの気もするし、でも少し肌のハリがなくなった気もする。そんな事を考えながら頬を指で突くが目を覚ます様子はなかった。さっきから、何度かちょっかいをかけてみても、起きる気配がない。一人目覚めている事にも飽きてきたし、それほど朝寝をしたいわけでもない。でももう少しこの温もりを感じていたい。先輩の方を向いて肩まで布団を引き上げた。

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