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第10話
以前、奏斗も優斗も互いに変な虫がついたらいけない、妙な男に騙されたらいけないから、と、恭一、大貴、慶太の部活の先輩、後輩の同じΩに協力して貰いながら、恭一たちを通じ、監視し合っていた。
優斗は奏斗が表情に乏しく、口数も少ない美形な為に、奏斗にはクールキュートという訳のわからない肩書きがある事を知った。
奏斗も奏斗で、愛想もよく、よく笑い、爽やかな兄に秘かに思いを寄せるα達がいる事を知ったのだが...。
奏斗は秘かに兄と交際を始めてもなお、恭一たちを通じ、兄を好きだ、とか、可愛い、と抜かすαについて、情報を貰っている。
それは、以前、噴水の縁に脚を引っ掛け、噴水に飛び込んでしまった兄の濡れた姿に興奮したαに、優斗が襲われかかっている兄に鉢合わせした経験から来ている。
その時、奏斗は兄を襲う、三年のαを見事なジャンプ力を発揮し、2発の飛び蹴りを見舞わせ、撃退に成功した。
兄の優斗を好きだ、と情報を貰うなり、奏斗はある手段で、2度と実はかなり穏やかでピュアな優斗を襲わせない予防をしている。
通りすがり、偶然を装い、相手の上履きを履いた脚を踏みつける。
「あっ、すみません!脚が滑りました!」
にっこり、今日も予防しとかなきゃ、と三年の生徒に笑顔を見せる。
たまに、脚を踏み返されそうになる事もあるが、奏斗は実は瞬発力に長けている。
ひょい、と飛んでかわすなり、相手の脛を蹴る。
もしくは通りすがる敵の背後に回り、膝裏を膝かっくん。
弟の奏斗はラスボス系美少年、と優斗のファンからは恐れられ、優斗も知らず知らずのうちに弟の奏斗に守られている。
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