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第14話
温泉の後は両親の部屋で早めの夕飯。
懐石料理に舟盛りに、お兄ちゃんだけでなく、僕も目を見開き、笑顔になる。
....お兄ちゃん、箸、逆に持っていないかな。
食事しながら、隣の兄をチラリ。大丈夫だった。
「父さん、母さん、結婚記念日、おめでとう」
お兄ちゃんが言うなり、日本酒も飲んでいる両親は、笑顔で、
「ありがとう、優斗」
と答えた。
不意にお兄ちゃんが僕の耳元に顔を寄せ、ドキッとした。
「父さんたち、邪魔しちゃいけないから、あんまり長居できないね」
....確かに。
まさか、今更、16歳離れた、弟や妹が出来やしないよね、と、ちょっと複雑だけど。
「んー!美味しかった!」
「だね!お腹いっぱい!」
僕と兄は部屋に戻り、兄は浴衣姿でベッドにダイブ。
僕もその傍らに座った。
「お、お兄ちゃん」
「んー?」
「浴衣の前、はだけてる」
「えー?」
「....パンツ丸見え」
慌てて、兄は起き上がり、浴衣の前を合わせた。
....お風呂で、そのボクサーの中身はちゃっかり拝見してしまいました。
ごめんなさい、お兄ちゃん。
「でもさ」
「ん?」
「....2人きりだね、お兄ちゃん」
お兄ちゃんを見つめると、きょとん、と丸い目で見つめ返された。
か、か、可愛い。
「....お兄ちゃん、猫より可愛いよ」
「えっ!?猫の方が可愛いよ、奏斗は犬派?」
いや、そういう意味じゃないんだけど....。
お兄ちゃん、ドジなだけじゃなく、鈍感な気がする...。
ここは僕がリードしなければ....!
「お兄ちゃん、ほっぺに睫毛ついてるよ」
そっと、兄の頬に触れた。
「え?何処?」
「瞼、閉じて?」
素直に兄は瞼を閉じた。
口を尖らせ、ゆっくり近づけていく...兄の何も知らない、少し肉厚な可愛い唇へ....。
と、その時だった。
「優斗ー!奏斗ー!」
ガラ!
勢いよく、引き戸が開かれた。
「きょ、恭一さん、大貴さん、け、慶太さんまで、なんで....!?」
「ああ!俺が誘ったんだ!結構、早かったな!」
瞼を開けた兄が満面な笑みをみんなに向けた。
な、な、なんだとーーー!!?
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