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第20話
横向きで眠っている蓮太くんの背中の帯に挟まれた、ハリセンを起きないように、そーっと取り出した。
手に取ると。
取っ手が伸縮性、よく出来てるなあ...て感心してる場合じゃないな。
蓮太くんから秘かにお借りしたハリセンを持ち、オーシャンビューが望める、お洒落なウッドチェアが2つある、窓際へ。
そろりそろり、足音を立てないよう忍び寄る。
兄のお会いしたような方だったらいいけれど...いざとなったら、僕は戦う!
人影が消えた窓際で、思いきり、ハリセンを振り上げた。
「....奏斗?」
「だ、大貴さん....?」
互いに目をパチクリ、慌てて、ハリセンの柄を縮め、背中の帯に挟み、隠した。
「....眠れないんですか?大貴さん」
「えー、うん、奏斗も?」
「えー、あー、まあ....」
兄の寝顔を見つめていたら、興奮してしまい、眠れなくなり、キスする寸前でした。
ふう...と大貴さんは肩を落とし、ため息をついている。
「....なにか悩みでも?」
「悩みというか....誰にも話さないって誓う?」
「大丈夫ですよ。僕で良かったら」
大貴さんが切り出した。
「ほら、俺、王子に食事に誘われたって話したじゃん?」
「あー...副会長の」
「そう」
「食事、行ったんですか?」
「うん....」
まさか、王子に襲われたとか....?
僕は真剣に大貴さんの話しを聞くことにした。
「....違ったんだよね」
「違った....?」
こくん、大貴さんが頷く。
「俺と恭一が幼なじみだって、王子、知ってたんだ。で、恭一とのキューピットになって欲しいって言われて....」
....なるほど。
大貴さん目当てではなかったから、ショック受けてるのか....。
「恭一は王子、タイプじゃないと思うんだよね」
「....何故?」
「だだだだって、ほら、おおお俺と恭一、付き合い長いから」
明らかに大貴さんが動揺し始めた。
....もしかして、もしかする....?
「そうは言っても....わかんないと思います」
「....え?」
「恭一さん、案外、王子のこと、タイプだったりして」
大貴さんが子犬のような眼差しで僕を見つめ、項垂れた。
「あっ、でも、わかりませんね、タイプじゃないかも」
「だよね!俺もそう思う!」
「確実ではないですけどね」
また、大貴さん、どよーん。
なんだかこの状況を面白い...と思ってしまう小悪魔な僕がいます....。
にやり。
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