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第23話
一部、大あくびしながら起床した。
が、大貴に至っては未だ眠っている。
「こら、起きろ」
パン!と恭一が額を叩くが、んー、と布団の中にうずくまってしまった。
「かたつむりみたいー!」
キャハハハと朝っぱらから慶太さんが盛大に笑う。
「あ、あの、蓮太くん....?」
兄の優斗はまだ眠っているが、起き上がった、兄の反対側に座る、蓮太くんにクエスチョンマークが飛び交う僕。
「....ハリセンがない」
あっ、と僕はようやく思い出した。
大貴さんをお化けと間違い、こっそり、眠っている蓮太くんの帯からハリセンを抜き取ったままだった。
慌てて、背中側に装着されているハリセンを蓮太くんにお返しした。
「緻密によく出来てるね」
「....ええ、まあ。10年近くの歳月を費やし、出来た逸材ですから。ですが、何故、奏斗さんがハリセンを?アホがなにかしました?」
「あ、ううん!どんな感じなのかなって気になって、それだけ。でも、朝食、楽しみだなあ!お腹すいた!お兄ちゃん、起こさなきゃー」
「ですね」
蓮太くんがにっこり微笑んだ。
わ、笑った。蓮太くんが。
ずっと真顔だったのに。
「うっわ。蓮太が笑ったー、槍が振るー!」
パーン!
朝から蓮太くんのハリセンは容赦ない。
そうして、兄と大貴さんも目を覚まし、朝食の為にレストランへ。
親は親、僕達で別れて食べる事になった。
和洋中、様々な一品に目が輝いてしまう...!
「迷うね!お兄ちゃん!」
「....だな」
あれ?お兄ちゃん、元気がない。
ついでに大貴さんも。
大貴さんについては、僕が後で一肌脱ごう!
「優斗さん、それ、何処にありました?」
「え?向こうの奥の方だけど」
「ありがとうございます」
蓮太くんは笑顔で兄に礼を言い、浴衣姿で兄の皿に盛られたベーグルを探しに行った。
「あー、さすが、元三ツ星レストランのシェフだな」
「美味いねー!朝から豪華ー!」
僕は蓮太くんの笑顔に首を傾げてばかり、変わらず、元気なのは恭一さんと慶太さんだけだ。
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