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仕事

BLOOMに連れ出された翌日、日曜もLong Tailは営業日で、少々眠たい気がしつつも出勤し、溜まっている縫製を深月と並んで済ませる。 「昨日は楽しかった?」 「はい!清太郎さんはとても素敵でした。あと、いくつか注文頂いていて……咲様のドレスで少し相談があります。」 「デザインは考えたの?」 「まだラフなんですけどね……」 10枚のラフを台に出す。 「君は帰ってからこんなに描いたのか……」 「止まらなくて!!」 深月は真剣にラフを眺めていく。 「これ、咲さんに似合いそうだね。あの人は凹凸あるから。」 深月が手に取ったのは、バストの谷間やヒップの割れ目だけをくり抜いてレースを貼り付けた様なエナメルのドレスだ。 「これ、エナメルじゃなくてサテンにしたら?」 「サテンだと強めキャバ嬢みたいになりませんか?女王様に見えなかったらダメな気がします。」 「咲さんはもうベテランだから、エナメルじゃなくても良いでしょう。あと、キャバ嬢はこんなの着ないよ。でもオーダーメイドなんだから、本人にエナメルとサテンとレースの生地見本もっていて値段を含めて相談したほうが良いと思う。」 「わかりました。そういえばサテンのカシュクールドレス着ていましたね……仕事着ならポリエステルで仕上げたいし、パーティーならシルクかレーヨン……どちらにせよ艶が上品で深い黒で仕上げたいですね。」 「デシンとか合いそうだね。洗濯についてとかもメリットデメリットを上げていけばいいよ。」 「わかりました。その作業は今日帰宅してやっておきます。」 「僕は清太郎とランチに行くから、今やってるジャケットの仮縫い終わったらコスチュームの方を進めて構わないよ。」 「ありがとうございます。特に用は無いですけど、清太郎さん帰りによってくださいますかね……」 「訊いてみるよ。それから、もう一件のお客さんの寸法見る限りはこっちのスレンダーなエナメルのジャケットにパンツの案はかっこいいと思う。」 「そうですよね、かなり華奢でモードな雰囲気の女王様なんですけど、かっこよくなりすぎちゃうのが悩みだそうです。」 「女王様とはいえ、男性相手の接客業である事には変わりないからね……」 「だからパンツにするかはもう少し悩みます……」 心情は察するが、春斗としては本人が好きなコスチュームを着た女王様なら誰でも素晴らしいと思ってしまう。 難儀である。 春斗は仮縫いを手早く済ませ、間違いが無いか何度か確認をしてからコスチュームの方に集中した。 細かい所を決めてデザイン画を仕上げれば、女王様達に見せる事が出来る。 エナメル風のイラストと、サテン風のイラスト、どちらも描きながら、我ながら見事な艶の描きわけだと悦に入る。 スレンダー女王様のコスチュームは、ティーバックのレオタードタイプのコスチュームにローライズパンツを重ね、腰の曲線が目立つ形にし、詰め襟のスッキリした見た目に、女性らしい膨らみのあるジャケットをつける。 SF漫画作品に見られるデザインをSM的にしていく。 作業をしながら、ふと、清太郎が人を痛め付けている姿を思い返す。 背筋がぞくぞくして、頭が痺れる様に感じる。 女性以外にこの様な気持ちになる事はそう頻繁には無い。 ましてや、男性相手に踏まれたいという思いは初めてだ。 自分をユカに重ねると、夢心地になる。

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