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初めて
ボクサーパンツ一枚になった春斗の身体は若者らしいふっくらとした筋肉がついている。
スーツを着こなす為、女王様の隣に立って美観を損ねない為だけの自己管理の賜物である。
向かい合って暫く春斗を見つめていた清太郎が手を伸ばしてくると、まだ何もされていないのに春斗はびくりと震えた。
男性にしてはほっそりとした清太郎の指が、春斗の頬から唇を通り、そして首を撫でて身体の中心をなぞる。
ゾクゾクと全身に快感が広がっていく。
するりと立ち位置を変えた清太郎は、春斗の腕を力強く掴み、纏め上げて後ろ手に縛った。
前屈みになった春斗の頭を掴み起こして、胸をはらせると、上半身をしばり上げ、普段なら外す事が多い頸動脈の脇に縄を走らせる。
吊床に上半身を固定されると、腰から脚を一本ずつ縛る。
全身がぴっちりと圧迫され、腰の縄も吊床から引張上げられると、股間もギュッと締め上げられた。
本当に逃げられない状態になると、春斗は急に安心した。
本当は全て委ね、好きにされたいのに、怯えたり、相手を尊重したふりをして、他の人を見て羨ましいと思う。
しかし、今、怯えながら自分の望みを伝えて、それを受け止めて縛っているのは清太郎本人であり、他の誰でもない。
春斗はただその圧迫感に身を任せる事ができる。
片脚も吊り上げられ、比較的柔らかい春斗の脚は弧を描いて上に向かう。
だんだんと苦しい体制になっていく。
縛るという行動の1つ1つが春斗を追い詰めていく。
そして、地に爪先立ちになっていた最後の脚も、今度は胸の縄に連結され、頸動脈を緩く圧迫していた縄は急激に引っ張られて首を締め付けた。
徐々に脳が酸欠になっていく中で、口にも縄をかけられ、背中に反り返され、既に上げられた脚に近づくと、鈍い痛みが腰に走る。
ユカとのショーに似ているようで違う。
「ゔぅうう………」
春斗は唸り声を上げて、その苦しさを和らげようと息も荒くなる。
尋常ならざる苦しさだ。
それでも床に座って見上げて笑っている清太郎を見たら、嬉しさで泣けてきた。
更に縄を手にした清太郎は、胃袋の所に縄をかけ、気持ち悪さを与えてきた。
「うゔぅう!うう!!」
必死でそれはまずいと訴えるも、無視されて、股間の方にも縄は走り、ペニスをがっちりと包み込んで拘束してしまう。
同じ男として信じられない容赦の無さで、その縄もどこかに引っ掛けられて瘤が睾丸を押し潰し、春斗は叫んだ。
「ひはい……!!ひはい………ひはい!!!」
口に縄があり、何を言ってるんだからわからない春斗の叫び声は、清太郎を笑わせるだけだった。
「痛い、苦しい、あと足りないのは、熱いかな……」
清太郎は既に蝋燭に火をつけて溶かし始めていた。
そして、背中には今までの低温蝋燭は本当に低温だったんだなと理解する、鋭い熱さが突き刺さった。
春斗のうめき声と、清太郎の笑い声は店内にずっと響き渡っている。
しつこくしつこく熱い物を垂らされて、春斗は徐々に目の前が白くなっていく様な気がする。
ぼうっとした頭でになると、上半身が床スレスレに降りていく、そして、腰の縄が鼠径部に食い込み、頭に血が登った。
暫くすると、元々痛かった胴体が、いよいよ激痛に変わった。
春斗は完全に飛んだ。
ガクガクと震えて、何も無くなった。
小学校の校舎で、一人の女の子に踏まれ、蹴られ、私のペットでしょう本当にグズなんだから、となじられ、愛おしさと興奮と幸福と懐かしさに満たされた。
背中をドスンと殴られ、バシャリと冷たい水をぶっかけられ、我にかえると、縄は総て解かれて床に転がっていた。
コップを置いた清太郎は床にしゃがみ込んで、頬杖をついて春斗を見下ろしていた。
「おかえり。」
「はぁ……ただいま……小学校に行ってました……」
声がガサガサである。
「飛んでたね。」
「痛すぎて、気持ち良すぎて、てっきり死んだのかと……」
「人って丈夫だよね。」
「これがセイ様の好きなプレイですか?」
「の、1つ。」
「僕も好きです。もっとセイ様の事を知りたい。」
春斗がヘラリと笑うと、清太郎は嬉しそうに無邪気な笑い方をして乱暴に春斗の頭を撫でた。
その笑顔は、春斗の胸を焼き焦がす。
信じられない可愛らしさと、美しさ、まるで女神。
この人が目の前で自分に笑いかけることがご褒美だと思った。
そして、その後は春斗と清太郎は揃って老人会のテーブルに呼ばれる。
「セイちゃんとハル君のセッションは、やっちゃんを思い出しちゃったよー」
「あ〜懐かしいね。もう10年位前か?彼は元気なのかね。」
「奥さんに子供産まれて別れちゃったんだっけ?」
老人達の懐かしそうな顔に清太郎はあからさまに嫌な顔をするが、そんなの知ったこっちゃないという感じで昔話で盛り上がる。
「イケメンなのに男飼うなんて意外だよね。この子は新しいお気に入りなの?」
「でもやっちゃん以降は女の子だったよね。どうなの?」
「両刀ってやつだよね、今風に言うとバイってやつかな?」
「あれじゃないか、きっと恋愛とSMを別けたんだよな?」
「十代のセイちゃんはすっごい落ち込んでたよな。」
「ジジーども!デリカシー買いに行ってこいよ!!」
「わかったわかった……ユカちゃーん!セイちゃんにデリカシーを一杯!」
「かしこまりました!デリカシーってなんです?」
「アマレットとウィスキー!全員の伝票にゼロを好きなだけ足しといてくれ!」
「ゴッドファーザーですね!ゼロかしこまりましたー!」
吠える清太郎もお構いなし、ユカも慣れたもので、強いマゾ達である。
実際ユカが伝票を弄る姿は見えない、いつものことなのだろうと理解した。
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