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これからどうする

「っていう、セックスをしました。」  清太郎は不遜な態度で話し終えた。 「良いセックスじゃん……アナルに潮吹きとか、マジで最高じゃん……」  ぐちゃぐちゃ好きのケイはうっとりした顔をしている。  春斗をクローゼットに押し込み、セックスを強行した清太郎は、帰り際のケイに、このあとどんなセックスをしたか詳しく教えてくれたら今日の事は水に流そうという事を囁かれていた。  その囁やきを暫く放置していたが、重ねる様にイベントの後行くかもと言っていたのに何の連絡もせずに春斗とセックスをしていたので、清太郎はいよいよ誤魔化せない位ケイに迷惑をかけていた。  流石に申し訳無くなり、ケイのお店に電話をし、フルオプションで空き時間を埋める様な予約を取り、最大限近場で多少気の利いたホテルで呼び出して好みの酒を用意した。  本来女性向けだが、いつもの受け付も請け負ってくれた。  清太郎の事はケイの太客だと認識している。  セックスをするときに清太郎からお金は取らない分、お礼かわりにただのマッサージとしてお店を通して呼び出していた。  風俗店員への最大限の謝意と罪滅ぼしである。  合法的に正当にお金を渡せる。 「そんで、恋人になったの?」 「名前なんかわからないよ。」  煙草を歯に挟んで上下にゆらしながらくぐもった適当な感じで答える。 「案外名前って大事だよ。一旦は安心出来るしお互いの責任にもなるからね。」 「春斗から言い出すまではほっとく。」 「尊重と煮えきらないのは別物だからね? 表向きかっこつける才能は誰よりもあるのに、本体がダサすぎて凄い。」  清太郎は項垂れる。 「嫌われたくないし、でも他の人に目移りされるのも嫌だし、最初は多少かっこつけとけばとりあえず離れてはいかないだろうと思ってたんだよね。目の保養に鑑賞してたかったし。だけど本当に何やっても離れていかなそうで怖くなってきちゃって。それに甘んじているといつか酷い喪失を味わうんじゃないかと思うわけ。他人の気持ちって今は良くても後々の絶対って、無いわけだから。」 「そお……だね……」 「おい、流石にそんなにあからさまに呆れるなよ。わかってるの、わかってるけど、自分からどうこうしたり、信じたりするの怖いの!!」 「えぇ……マジでこの人冷静な童貞みたいな事言うじゃん……」 「心が童貞なんだろうな……」 「寧ろ普段どうやってあんなにかっこつけてられるわけ?」 「女性相手だと怖くないんだよ。そもそも別の生き物だから。」 「なんかクズの匂いがしてきたぞ……ザワザワするぞ……」 「いやいや、ケイだってそうでしょ、同性相手の方が視線厳しくない? 異性の場合は少し違うでしょう。」 「うーん、男の場合、女の子からの目線の方が厳しくないか……? 特にルックス面で。」 「俺はあんまりルックスで気になった事ない。って言ったら?」 「あ、なるほどこういう事か、確かに男同士だとムカつくな。」 「でしょ、俺だってケイの聞き上手には嫉妬するもの。」 「そうなの?」 「そうなの。」 「それで、それが同性のマゾだと途端に自信なくなって流されに流されて戸惑うと。自分のS性の危機を感じると。」 「そう。」 「いや、流石にもう悩まなくて良いでしょ。春斗くんマジで頭おかしいから。クローゼットに閉じ込められて好きなやつのセックス見せられてもまだ好きっておかしいし、初めてのセックスでケツの穴に失禁するのもおかしいし、それにちょっと愛を感じてる清太郎も充分おかしいから。普通に考えてみ、おかしいから。」 「そうかなあ……」 「おかしいから。」  ワインを一本飲み干していた。 「で、マッサージする?」 「して欲しいかな。」  清太郎がシャワーを浴びている間に、使い捨ての不織布シーツがベッドに広げられていた。  そこに倒れる様にうつ伏せに転がる。  少し温められたオイルを背中に垂らされて広げられる。 「いつも通り?」 「いつも通りで。」  腰に温かいケイの手が密着して、グリグリと温める様に押していく。  女の子相手よりも強めにしている。  清太郎は半ば眠りながら、精神は深い所に沈んでいく。  なま温かい沼に落ちたみたいだ。  張った筋肉を潰しては流していく。  全身くまなくオイルで撫でられる。  純粋無垢な快楽だ。  無心になった所で、ケイは清太郎の臀部を指先で撫でた。  清太郎はビクッとした。  その指先だけで急にエロに転じてしまった。 「そういうのいいよぉ……」  殆ど寝ぼけながら訴える。  ケイはその言葉を無視した。  そっと押し開き、肛門も撫でる。 「っはぁぅ……」  気持ち良いもんは気持ち良い。  優しい指使いで周囲を揉み解し、指をスルリと入れる。 「あっちょっとっ……やりたくなるからやめて……」 「今は仕事中だから、最後まではしないよ? ケジメは必要だから。」 「それがこまるっああっ!!」  指で中と外から筋肉を挟んで微かに揺らされる。  滑るオイルで肛門の皺を引き伸ばす様にマッサージされ、反対の手では脚の付け根を揉み解している。  立ち上がった物が邪魔くさく、腰を少し浮かすと、すかさずクッションをお腹の下に入れられた。  股間は楽になったぶん、快感が押し寄せる。  指を二本に増やされる。 「春斗くんのちんこ、どのくらいの太さ?」 「えぇ……こんくらい……かな……」  指で輪っかを作る。 「俺よりちょっと太いのね。」 「長さは同じ位……」 「了解した。やっぱり同性だと確かにちょっとムカつくわ。」  何をする気か察した清太郎は、ケイに身を委ねた。  いつもよりも長い時間をかけて、グズグズに柔らかくされてしまった。  普段は自分で解してから呼ぶか、とりあえず緩める程度だ。  今のアナルはさぞや柔らかくて気持ちよかろうと、ケイは自分の仕事ぶりに大満足していた。  抵抗のない入口と、充血して敏感なふかふかのアナルだ。 「はい、春斗くんに電話しなよ。」  ケイはスマホを清太郎に差し出す。 「え、やだよ……オナニーして帰るよ……」 「ダメだよ、こんなの生チンコ無かったら清太郎は頭おかしくなるでしょ。」  うつ伏せの清太郎の項を撫でると、ビクビクと身体を震わせ、アナルもヒクヒクする。 「ほら、意地張るの良くないよ。」 「忙しかったらどうすんだよ虚しくなる。」 「いや、さっき昼間にSNSでメッセージしたら暇だって言ってたから大丈夫。」 「え、なにそれ、怖いんだけど……」 「いや、マゾをクローゼットに閉じ込めて他の男とセックスするほうがよっぽど怖いから……何いってんの……」  ケイは入れたままの指の先を曲げて、清太郎の前立腺を擦った。  それだけで、悲鳴をあげて射精しそうになったが、すぐに指は動きを止めてしまう。 「ほら、早く、辛いんでしょ〜?」  屈辱的で相当腹が立つ。  電話を鳴らすと、ワンコールで春斗は出た。 「今、大丈夫……?」  ゆるゆると、ケイは指を動かしている。  清太郎は全力でなんともないふりをする。 『大丈夫ですよ! ケイさんから清太郎と飲むから夕方呼び出されるかもーって連絡頂いてて、BLOOMの側で待機していましたよ。今ご一緒ですか?』 「一緒……」  言葉に詰まって、清太郎はケイの腕をガシッと捕まえて動かせない様に止めた。  しかし、指先だけを動かし始めたので、堪らずスマホを落として、歯を食い縛った。  ケイはスマホを拾い上げた。 「ごめんね突然、BLOOMの側の、一番でっかいホテルわかる?」 『はい。』 「そこの1301の部屋に来てくれる? ここフロントスルーしてエレベーター乗れるから。」 『わかりました。偶然ですけど、目の前の喫茶店に居たので……5分で行けます。』 「助かる、良かった、ありがとうね。」  電話を切る頃には、もう清太郎はどうでも良くなってきて、射精したいとしか考えられず、早く来いと思っていた。 「清太郎からはさ、今日はお金貰い過ぎなんよ。だからこれも俺の職業上のサービスってことで。」 「おせっかい……」    

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