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過剰ご奉仕

 春斗が呼び鈴を鳴らすと、ケイが爽やかに応じて出迎えた。  春斗は、清太郎の姿を早く確認したいと、少し身を乗り出してしまう。  奥にベッドが見える。  ケイに対して悪感情が無いわけでもない。  M女性は仲間の一人と割り切れる。  しかしこの人は清太郎がなかなか見せてくれない顔を見ているのだ。 「ねえ、春斗くんって男は何人とセックスした?」 「清太郎さんだけですけど……」 「んじゃ入れる側は一回?」  ケイに入口を塞がれながら、問われる。 「はい……」  マウンティングされてる気分になって、居心地が悪い。 「入れられる側はやってるよね? 女王様のペニバンや、清太郎にも入れてもらった?」 「はい……」  ケイは春斗の手を掴み、中へと引き入れていく。  ベッドの上に座り直そうとして子供みたいな座り方になって、息も絶え絶えに全身を赤らめた清太郎がとろけた顔で見上げてくる。  春斗は息を呑む。 「なん、なん、なな、なにごとです……」  上手く言葉が出てこない。 「オイルマッサージと、アナルのマッサージしかしてない。」 「こんな……何故呼び出されたんですか……」  息を整え直して、また酷い屈辱を味わうのかと警戒心を顕に、二人を交互に見ながら春斗は問う。 「うちの店、カップルカウンセリングコースがあるんだ。春斗くん、清太郎に本気のご奉仕したくない? 覚えない?」 「清太郎さんから覚えろって命令されたなら。」 「春斗くん自身は? 清太郎をこうしたい?」 「清太郎さんが、望むなら……」 「春斗くんは、この清太郎がエロく見える? 魅力的?」 「当たり前、ですよ……」 「じゃあ今度、教えてあげるね。」 「清太郎さんは……されたいですか……?」  春斗は縋る様に清太郎を見つめるが、一歩でも近付いたら理性が飛びそうで、動けない。 「もう、なんでもいいから春斗、早くして……もうチンコもアナルもジンジンしすぎて辛い……」 「今日はもう時間だから俺は帰るよ。そんなわけで、またね春斗くん。連絡待ってるよ。」  返事も出来ずに居る間に、ケイはささっと帰っていった。 「はやく! 脱げ!」 「はい!」  春斗は服を脱ぎながらベッドに向かう。  うつ伏せで、つきあげる清太郎のお尻に恐る恐る触る。 「はやくいれ……」 「ごめんなさい、ごめんなさい、びっくりしすぎてて……」  春斗はヘニャヘニャだ。  殺気立った清太郎は、春斗のペニスを咥えようと押し倒して口をあける。 「うぅっ……」  咥える前に一瞬で準備が出来た。  そして、春斗に跨がり、朦朧とした目で春斗を見つめながら腰を下ろす。 「うあっあっ……」  春斗は情けない声をだす。  清太郎の中は、ぐにゃぐにゃと柔らかく、ゼリーに包まれている様な、人工的なオナホの様な、人間を堕落させる様な、そんな中になっていた。  あ、これは癖になる、まずい……と、何処か冷静に、その未知の感覚を味わう。  吸い付いて、清太郎が動くと、ぐぽぐぽと中が液体の様に吸い付きながら動く。  内壁の柔らかさのせいで、すぐに射精してしまうようなどうしょうもない刺激的なものではない。  これは、セックスだ。  急激に、春斗の心の雄が呼び起こされた。  最大限優しく、清太郎の身体に触れる。  興奮して貪る、そういうものではなく、清太郎を喜ばせる為に撫でる。  慈しむ様に、求められるままにねっとりと、清太郎の唇と舐め、そして軽く吸いながら啄んで、何度も唇を重ね、舌を絡めあわせて唾液を交換する。  清太郎が自ら触っている乳首にも吸い付き、舌先で撫でながら潰して転がす。  清太郎の力が完全に抜け、ぐにゃりと春斗に凭れ掛かる。  頭と腰に手を回し、そっと押し倒して、手を繋ぎ合わせ、キスをしながらゆっくりと腰を動かして最奥で少し止め、引いては突く。  波の様に重く、ゆっくりとした動きだ。  清太郎は奥をつく度にギュッと縮こまり、首に唇を這わせると、それだけで甘い息を吐く。  繋いだ手に力が籠もったり、緩んだりする。  清太郎の中が柔らかい一方で、春斗の物は怒張して固く、結合部からぐちゅりぐちゅりと卑猥な音が漏れる。  乱暴にすれば、清太郎が壊れてしまいそうで、優しくすればするほど、春斗のペニスに絡みついてくる。  清太郎の腰を掴み、抜き差しを辞めて、お腹を突きあげる様に動かす 「あっそれっそれっ好きそれ……」 「僕もこれはヤバいですね……」  清太郎の中は全部が柔らかいのに、膨らんだ前立腺だけが春斗のカリに引っ掛かる。  それは実に官能的で、そう何度もやってはいられない。  少し止めては再開し、また止めて、もどかしくじれったい。 「もっと……」  自ら腰を振り出す。 「あっ……ちょっ……まだいきたくないので……」  慌てて清太郎を止めて、長い脚を持ち上げて抱えて、から自分で動く。 「っひぃ……あっあっ……」  じれったい刺激に堪らなくなって、清太郎は身じろぎをする。  シーツの擦れでさえも気持ち良く、震えている。  脚を下ろして清太郎の身体をうつ伏せにして、お腹に腕を回して軽く持ち上げ、小刻みにゆらす。 「アッアッアッアッ……」  揺れに合わさて喘ぎ声が漏れて、清太郎はシーツを掴む。  清太郎から垂れる先走りはとんでもない量で、ベッドから糸を繋げている。  清太郎は自分の物を刺激して射精しようと手を伸ばすのを春斗は捕まえて、上に伸ばし、触れないようにする。 「もう少し我慢してて、ください……」 「イヤだ、いきたい、もういきたい……いきたい……出したい……」  清太郎は泣き叫ぶ。  枕に顔を押し付けて、叫んでいる。  なんだか少し可哀想になってくる。  それでも、春斗はこの先の、もう少し先に、一緒にいきたい気分だった。  具体的にはよくわからないが、何となく本能的に。  丁寧に、清太郎の気持ち良い所だけを狙って刺激し続けた。 「ふっぅ……」  春斗も息を止めつつ、いかないように耐えた。 「前、まえ向きたい怖い、これ怖い……」  清太郎が真っ赤な目と、鼻と、唇を向けてくる。  ゾワッと全身に鳥肌が立ち、春斗は清太郎の向きを変えて再び向き合う。  清太郎は春斗の首にしがみつき、脚を腰に巻き付けて、なるべく密着しようとする。  二人で一つの塊になりながら、一緒に揺れた。  もはや気持ち良いのか何なのかわからない。  耳元で、清太郎の叫び声が割れた様に響く。  頭が、おかしくなりかけながら、やっと春斗は清太郎の背中を抱きながら、激しく揺さぶった。  息の仕方を忘れた清太郎が、全身を強張らせて、目を見開き、脳を焼き切る様な絶頂を味わう、収縮して引き込む様な動きをし始めた中に、春斗も精を放射する。  清太郎の喉から異常な濁音がして、春斗は清太郎の背中を何度か殴った。  清太郎は息を吹き替えしたが、身体は硬直して動かない。  そのままそっと寝かせるが、少し動くと清太郎はビクビクと痙攣する。  肛門が収縮し過ぎて、春斗をガッチリとくわえこんだまま抜けない。  冷たく固く握り締めて震えている手を優しく包んで、温めながら、軽く揺らして指を一本づつ開いていく。  過呼吸気味の清太郎を抱き締めて、縮こまった肩や腕を擦りながら、春斗は努めてゆっくりと、大きく深呼吸をする。  何度も深くゆっくりとした呼吸をすると、自然と清太郎も呼吸を合わせる様に、深く吸い込み、そのまま吐き出せなくなって、胸を反りながらひきつけを起こす。  そして、一気に吐き出すと、次の呼吸は少しマシになる。  何度かひきつけながら、おちつくと清太郎は徐々に軋みながらも脱力して、そのまま夢の世界に落ちていった。  春斗はやっと緩んだ身体から自身を引き抜いて、ホッとしたと同時に、恐怖が湧き上がり、胸がドキドキとした。  殺したかと思った。  腹上死は都市伝説ではないのかもしれないと、何度も清太郎の身体に触れて、体温があるか、脈は正常か、呼吸は穏やかか、確認しながら、溢れてくる精子をティッシュで拭い、温かいタオルで全身を拭う。  布団をかけて、なるべく急いでシャワーを浴びて、再び呼吸と心拍と体温を確認する。  ドキドキしながら、清太郎の髪を撫でる。  死んだように微動だにせずに寝ているのがまた、春斗を心配させた。  穏やかな寝息を立てながら、少し寝返りをうつようになって、やっと春斗は隣に潜り込む。  すると、ころりと転がった清太郎は春斗の胸に収まった。  春斗は腕枕で抱き締めてながら、眠った。    

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