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第9話 披露される愛玩奴隷 4

気づかれた一希は、意を決して扉を開けて部屋に入った。扉が開いていたのもあるが、目の前のこの二人から逃げ切れる自信なんてなかったというのが正しい。 部屋の中にはソファに座ってニコニコと涼しい顔をしている白髪の長髪・ゼルギウスと立ったまま腕を組んで壁に背中をつけて厳しい表情をしている漆黒の長髪・ヴィンセントがいた。 「お疲れ様でした、一希様。あの螺旋階段を降りて来られたとは、よく頑張りましたね」 あの階段は長いので登り降りに腰を痛めて大変なのですよ。 人間臭く労うゼルギウスだが、その隣でヴィンセントは一希に厳しい表情を向けている。 ヴィンセントの圧力に圧倒されそうだ。 「どうして、分かったんだ」 ヴィンセントの圧力にたじろぎながらも一希は睨み返した。 なぜ自分があの部屋から出たことが分かったのだろう。扉も今考えれば自分の為に開けていたような感じだった。 「うーん、どうしてと仰られては教えて差し上げましょう。まず、貴方様のその首輪には王の魔力が込められています。貴方様が動けば、王はそれだけでも気づかれるのです」 ゼルギウスの説明に一希は自分につけられた首輪を触った。自力で外そうとするが外れない。そもそも、どこに錠がかけられているのか。 「その首輪は王にしか外せません。王の魔力が備わっていますからね」 ではこれ(首輪)がある限り、自分は人間界に帰る事ができない、という事なのか。 「なぜこんな真似をした」 一希はヴィンセントに聞いた。 「君自身に危険が及ぶからだ。このドールハウスは私達淫魔以外に他の妖魔達が奴隷の売買を商売とする場所。私の他に人間の君を欲しがる者は山ほどいる。君の安全のためだ」 連れて来たのはそっちだろう。 内心一希は突っ込んだ。 やはり、ここまで来る時の部屋の話し声は奴隷の売買交渉だったようだ。 「でも一希様もお元気ですねぇ。私はもうあの螺旋階段は長すぎて登れませんから、瞬間移動していますがこれだけお元気なら充分・・・」 王と激しいセックスもできますね。 「ーーっ!?」 いつの間にか、一希の向かいのソファにいたゼルギウスが今は一希の隣にいる。 驚愕した一希はゼルギウスと距離を取る。 「おや、そんなに驚かれなくてもよろしいのに」 くすくすとゼルギウスは笑った。 「これは淫魔の瞬間移動ですよ。私もこれで人間を攫い楽しくセックスしていたものです」 まだくすくすと笑う。あの拘束されていた時もそうだったが、ゼルギウスは笑うと本当に恐怖を感じるタイプの淫魔だ。ヴィンセントとは違う意味で、恐怖を感じてしまう。 無駄な動きをする脆弱な獲物。 そう見られている感じを覚えさせる。 ゼルギウスはクイッと一希の顎を掴み、彼と目を合わせる。 「フフフ、また渇きが訪れていますね。ここを脱出等と愚かな事は考えず、王に身体と心を委ねてみては如何ですか?淫魔王の番に選ばれるなんて、貴方様は幸運なのですよ」 ふざけるなこっちはそんなつもりはない。 そうゼルギウスに反論しようとした。 しかしゼルギウスの言う通り、再び身体中をあの渇きが襲ってきた。 「あ、あぁ・・・」 身体を自ら抱きしめて一希は座り込んだ。またこの苦しみが来てしまった。 今まで燻っていた渇きが一気に現れた。苦しむ一希を見てわざとらしくゼルギウスが労る。 「あぁ、可哀想に。こんなになるまで苦しんで。さぁ一希様。王に懇願するのです。渇きを鎮めて。貴方のモノを一希の中に入れて、と。さぁ、一希様」 ゼルギウスに促され一希はヴィンセントを上目遣いで見た。厳しい表情で自分を見つめていても、あの美しいサファイアブルーの瞳が自分を見つめている。 「さぁ、一希様」 再び促される。ヴィンセントに懇願するのは不本意だが、今は渇きを落ち着かせないと。意を決して、一希は口を開いた。 「ヴィンセント・・・た、頼む」 しかしヴィンセントは首を横に振った。 「それではダメだ。一希。渇きを癒やして欲しいなら私を誘うんだ」 ヴィンセントの拒否は、一希は軽い絶望を感じた。 「一希、私を誘いたければもっとおねだりしてごらん。そうでなければ入れてあげないよ」 何を・・・。 そう言おうとしたのに、さらに渇きが一希を襲う。 「んぅ・・・うん・・・」 さらなる渇きに一希は襲われる。 前回もそうだったが、とにかく苦しい。早く沈めて欲しい。 「ああ、可哀想に。苦しいですよね。一希様、私が言う事を王に直接仰ってみてくださいね」 助け船をだすゼルギウスに仕方なく一希は顔を向けた。 「いいですか?あぁ、ヴィンセント様。ヴィンセント様の猛々しいモノを一希の中に深くお入れください。一希の中を貴方様の精液で満たしてください、と。さぁ、一希様。足を開いて、今私が言ったことをそのまま王にお伝えするのです」 ゼルギウスの金色の瞳が自分を見つめていて、目を見開いている。息も荒く明らかに興奮している。 「い、言える訳ないだろっ」 ゼルギウスの興奮に慄いた一希は反論する。いくら苦しいからって自分からヴィンセントを求めてはダメだ。このまま苦しみが来る度求めていては、人間界にも帰れなくなってしまう。 「だ、誰が言うか・・・!俺は何としても、人間界に、帰る・・・!」 家族だっている。友達、仲間だっている。今頃速水が探しているはずだ。何としてもこのドールハウスを脱出して、速水たちと合流するんだ。 一希の強情な態度にヴィンセントは呆れた。 「何を言っているんだい。その渇きを癒せるのは私しかいない。人間界にはその渇きを癒すことができる者などいない。さぁ、一希。ゼルギウスが言ったように私が欲しいと言ってみなさい」 顔が紅潮している一希にヴィンセントは小さい子どもに語りかけるように言った。 しかし、座り込んでもヴィンセントを見ようとせず、一希は思いっきり頭を横に振った。 おやおや、とゼルギウスは呆れたふりをしてくすくすと笑っている。 「強情な方だ。だからこそ、私は調教が楽しくてしょうがないのですが・・・そんな強情を張る子には楽しいお仕置きをご用意しました。ーーそれでは、皆様お入りください」

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