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第21話 別れた子孫達 1

四人が連行された後、部屋にはディーンが発泡し不発に終わった弾丸が床に散らばり、廊下の壁は彼が激突した衝撃で大きな穴ができていた。 部屋には、ヴィンセントと一希しか残されておらず、シン、とした静けさだけが残った。 「ヴィンセント」 一希は長身の彼を見上げて言った。 「仲間をどうするつもりなんだ、一体」 一希は四人の処遇を聞いた。 彼等四人は人間だ。先程もヴィンセントの魔力でサムは発狂し、サムを殺そうとするヴィンセントに銃を発泡したディーンはヴィンセントに壁に激突させられ気を失った。二人がやられた姿を見て、速水も照史も戦闘不能だと判断し、拘束された。 自分よりも小柄な彼が、憎しみを込めて睨んでいるのを見て、ヴィンセントは目を細めた。 目の前の番が自分に向けるのは、愛情とは対極に位置する憎しみの感情だ。 今のこの子に映っているのは、仲間の命を盾に恐喝する卑怯な魔王なのだろう。 ヴィンセントも一希に視線を合わせて聞いた。 「私も聞きたい。一希は、なぜあの男の下で退魔師をしていた?」 速水の事だ。 「え?」 思いもよらない問いに一希は戸惑った。 「あの男は得体が知れない。本当に一希を人間界に連れ戻すつもりだったのか、私には疑問だ」 速水が、得体が知れない? 何を言っているんだ、こいつは。 「どういう事だよ、それ」 するとヴィンセントは、一本の黒いナイフを一希に見せた。そのナイフは刃そのものが細く、十字架のような形状で先端が尖っている。新品のような鋭さではなく、刃先が多少刃こぼれしている個所はあるが、今でも使えそうだ。 「何だ、それ・・・」 始めて見るナイフだ。 ヴィンセントは一希に説明する。 「これはスティレットナイフと言ってね、刃毀れからして数百年前に造られた物だ。ただ状態は良いから、今でも使える。これは殺傷能力の高いナイフだ。あの男が、私に向けていた物だ」 速水はヴィンセントと対峙する時、確かにそのナイフを向けていたのを憶えている。 さらにヴィンセントは続けた。 「これには破邪の霊力が込められていた。だがこれだけでは私は殺せない。これを彼が持っていたが、恐らく私を殺す為の物ではないね。このナイフには強い霊力は感じないから」 じゃあ、速水はなぜこんなナイフを持っていたんだ。 するとヴィンセントは、一希に尋ねる。 「一希は、健常な人間がこんな刃先の細いナイフで死ぬと思うかい?」 ヴィンセントは今それは殺傷能力の高いナイフだと言った。でもヴィンセントを殺す為ではない。じゃあ速水はどうしてこんなナイフを持っていたんだ? 「一希、このナイフはどうして造られたのか、知っているかい?」 ヴィンセントは一希に問いかけるように言った。 「これが造られるようになったのは1,200年代のヨーロッパ地方だよ。当時は兵士が戦に駆り出されていてね、殺されかけた兵士達がすぐに息耐えるように造られたのがこのスティレットナイフさ」 ヴィンセントの言葉にまだ一希はピンと来ない。何が言いたいんだ、この男。 「結論から言おう。彼が殺そうとしていたのは、私ではなく、君だ。一希」 「ーーえ?」 一瞬、一希は頭が真っ白になった。 速水が魔界に来たのは、自分を人間界に連れ戻すのは自分を殺す為? 呆然とする一希に、ヴィンセントはさらに続けた。 「これが殺傷能力が高いというのは、戦で重症を負った兵士を確実に殺せるからだ。健常な人間はこんなナイフだとせいぜい擦り傷程度だろう」 「う、嘘だ・・・」 速水達は、自分を助ける為に魔界まで来てくれたのではなかったのか。 「嘘じゃない。彼は眠っている君を何度も見ていた。目の前に私がいてもね。君を殺すタイミングを伺っていたのだろう」 一希にとって速水は退魔師としては先輩にあたる。しかし一希や照史に退魔師としてだけでなく、高校生からスカウトされて、今まで自分の人生の節目節目で悩んでいた時、真っ先に相談に乗ってくれた人だ。今まで退魔師をしていたのは、スカウトされた後速水が気にかけてくれた、彼の恩に報いたいからだ。 分からない。 どうして速水は自分を殺そうというのか。 一希はヴィンセントの言葉に苛立ちを募らせる。ヴィンセントも自分を殺そうとした速水を未だ信頼している一希の様子に怒りを感じ、一希の両腕を強く掴んだ。 「うっ・・・」 あまりに強い痛みに一希は呻く。 強い。腕の骨が折れてしまいそうだ。 思わず一希は苦痛の表情を浮かべる。 「いっ・・・痛いっ」 一希の表情を見て我に返ったヴィンセントはすぐに手を離した。 「悪かったね。痛い思いをさせて」 ヴィンセントは謝罪を口にしたが、掴まれた腕には痺れが残り一希は軽く両腕を振った。 「君は、分からないのかい?奴の本性が?」 「本性?」 なぜヴィンセントはこんなに速水を毛嫌いするのか、一希には分からなかった。 彼と一希が始めて会ったのは、一希が高校生くらいだった。同級生の照史と二人で廃墟ビルに心霊スポットの噂があり、真相を確かめようとビルに入った時だ。 ビルには、妖魔の妖気が充満していた。 二人の少年は何も知らず、ビルに入って歩いていたところを妖魔に襲われた。 だが襲われる直前、速水が妖魔を退治してくれた。 それからだ。 自分と照史は速水に助手としてスカウトされ、以降は三人で妖魔退治に勤しんでいた。その間速水は自分と照史には親切だった。 高校生という身分だからか、危険な仕事は絶対させなかったし、高校を卒業した後の事もよく相談に乗ってくれた。 速水は恩人だ。決して得体の知れない人物ではない。ましてや自分を殺そうとする人じゃない。 「速水さんに、何かあるのか?」 一希の問いにヴィンセントは肩を竦めた。 この子のその他人を簡単に鵜呑みに信用する姿は、無垢そのものだ。しかし同時に身を危険に晒している事を自覚していない所は、まだまだこの子が幼く、他人の真意を読み取る事が未熟なせいだろうとヴィンセントは思った。 「君は賢いが、あまりにも他人を信頼仕切っている」 思わずヴィンセントは呟いた。 「これだけは覚えておきなさい。恩を感じている者が、必ずしも善人とは限らない、と」 ヴィンセントは一希にそう忠告すると、明日速水を尋問にかける事を伝えた。 「尋問っ!?そんな・・・!」 何をするつもりだ。 一希は、妖魔に襲われる危険を孕んでまで自分を人間界から来てくれた四人に、ヴィンセントは何をするのか、焦りの表情を見せた。 「当然だ。君は私の大事な番。如何なる理由があれ、我が番の暗殺未遂をみすみす見逃す事はできない」 特に・・・とヴィンセントはスティレットナイフを見た。 「このナイフは製造された場所も限られている。なぜ彼がこれを持っているのか調べなければならない」 ヴィンセントを一希を見ると、不安そうにこちらを見ていた。 無理もない事かもしれないとヴィンセントは思った。 信頼していた男に殺されると言われたら仕方ないかもしれない。 実際一希は自分の暗殺を企てていた事を聞いて、正直戸惑っている。 ヴィンセントは、一希の表情から彼の不安を読み取り安心させるように穏やかな口調で言った。 「心配するな。別に殺すつもりはない。用が済めば、彼等は人間界に還すさ」 「ほ、本当か?」 殺すつもりはないというヴィンセントの答えに、一希は若干安心の表情を浮かべた。 そんな一希の表情の変わりようを見て、ヴィンセントにとっては正直面白くなかった。 だが、自分としても好んで殺生するつもりはないし、そんな事をして一希に嫌われては元も子もない。 それに此方としてもあの四人がわざわざ魔界へ赴いてくれて、情報を聞き出すのに手間は省けたのだから。 あと、とヴィンセントは薄いガウン一枚の姿と首輪を付けられている一希を見た。 汗が滲んでいる。頬も紅潮していて、呼吸が荒くなっている。 城に到着して、一希の体調の悪さには抱きかかえていたヴィンセントは気づいていた。魔界に足を踏み入れた事で、いつもより渇きの症状が強く出ているのは一希の様子からして明らかだった。 やはりまだ魔界の空気に身体が馴染んでいなかったのかもしれない。 「一希、おいで」 「な、何・・・えっ」 ヴィンセントは一希を横抱きにすると、キングサイズのベッドへ連れて行き、一枚しか着ていないガウンを脱がしてしまう。 「やっ、やめ・・・!」 「力を抜きなさい。そのままではさらに君が苦しくなるだけだ」 ガウンを脱がせると、両性具有化が進んだ一希の身体が露わになる。 肩は完全に丸みを帯び、形のいい乳房がヴィンセントに向けられる。その下の腰から尻は滑らかな曲線を描き、引き締まったウェストが曝け出された。 ヴィンセントに無理矢理ガウンを脱がされ、一希は羞恥が募り、涙を溜めてヴィンセントを睨むように見つめる。 両性具有化は一希を男性から女性の身体に変えただけでなく、淫魔王さえ誘惑する蠱惑的な美しい存在へと姿を変えていた。 「出来上がりかけているね。私を誘っているようだ」 「お前が脱がせたくせに、何を言ってるんだ」 ヴィンセントは一希を見て微笑む。その微笑みに一希は心臓の高鳴りを感じていた。 どうしてだ。 身体が変わっていくにつれ、ヴィンセントから、逃れられなくなっていく。 あの美しい笑みが自分に向けられていると思うと、すごく身体が渇いていく。 「うっ・・・」 ヴィンセントに裸にされた一希は、身体の奥から燻る渇きに苦しさを感じ両腕でヴィンセントが見えないよう身体を抱きしめる。ヴィンセントはそのまま自らの身体を抱きしめる一希を後ろから抱きしめ、彼の香りのベルガモットが一希の身体に染み込んでいく。 「大丈夫。君が欲しいというまで、このままだから」 ヴィンセントに抱きしめられて、身体の渇きの炎が徐々に落ち着いていく。 ヴィンセントが自分に密着していると、彼の股間が背中に当たり、熱を持ち膨らんでいくのがわかると、奥から彼を欲する気持ちが湧き上がった。 「やっ・・・、離れてっ」 これ以上ヴィンセントを欲しては、本当に自分は戻れなくなってしまう。 しかしヴィンセントはさらに密着を強めてこう言った。 「離れてなんて・・・そんな事言わないで。私のモノが入っている時はとても可愛くて素直なのに」 一希の耳朶をヴィンセントは舐めて甘噛みする。その快感にゾクゾクと背筋が疼く度、一希からヴィンセントへさらに密着しようとする。ヴィンセントは自分からやって来る一希を見て耳元で囁いた。 「ほら、身体は私が欲しいみたいだ。君が私を欲しいと言ってくれるなら、すぐに渇きを癒してあげられるのに」 「・・・っ」 恥ずかしくて言えない。 ドールハウスで幾度となく彼に抱かれたが、自分から彼が欲しいと懇願するのは抵抗がある。 「君から言ってくれないと、このままお預けにするよ?」 「そんな・・・っ!」 ヴィンセントは一希の耳朶から舌を伸ばし、首筋を舐めた。すると全身を震える快感が一希を身悶えさせる。 「このままお預けにすると、一希はどれくらい我慢できるかな?それを検証できるのも面白いね」 「・・・っ」 我慢できない。 魔界に来てから、身体がヴィンセントを強く求めている事を一希は気づいていた。 その苦しさが頂点に達したのが、城に到着してからだ。渇きが強く出て耐えきれずヴィンセントの腕の中で気絶してしまった。 今も、正直彼が欲しいと言いたい。 ヴィンセントに激しく抱かれて、絶頂を味わいたいのに。 仲間達が気がかりなのに、そんな事言えない。 でも、身体を愛撫するヴィンセントの手が気持ちいい。 ヴィンセントの愛撫と渇きが相まっていつの間にか一希のペニスは先走り液を垂らしながら勃起していた。 「うっ・・・んっ」 ペニスが勃起したまま、フルフルと震えている。身体が、彼の愛情に喜んでいるのが分かる。 「気持ち良さそうだね。私の舌にこんなに喜んで・・・」 「っ、あっ・・・」 背後からヴィンセントが一希の乳首を強く捻った。そのタイミングで絶頂に昇ろうとした一希のペニスをヴィンセントは自身の爪でペニスの鈴口を塞いでしまう。 「ぐぅ、どうして・・・」 絶頂に昇れない快感が一希の腹をぐるぐると蠢いていて、イヤな感じだ。 思わず一希はヴィンセントを見た。そこには、美しく微笑む美丈夫が一希を愛おしく見つめていた。 「一希、私が欲しいなら自分でココを開いてごらん?」 「ーーっ!」 ヴィンセントのしなやかな指が一希の後孔を優しく刺激する。 「やってみなさい、一希。ドールハウスで何度もやっただろう?」 それは毎夜ヴィンセントの調教でやらされた事だった。ヴィンセントは一希が涙を流しながら、自らの施す愛撫に悶えつつ限界まで引き伸ばして最後の最後に一希から求める性技を好んだ。 拒否は絶対に許さず、嫌だと言えばペナルティとして、さらに焦ったい愛撫を施される。 簡単に絶頂できない事を一希に教え込み、心も体も支配していくのだ。 あれを思い出すだけで、一希の身体がさらに渇きが増していく。恥ずかしさを感じながら、一希は四つん這いになり、自分の指を恐る恐る後孔に伸ばしていく。指は、ヴィンセントに見えるようゆっくりと拡げた。 「ヴィンセント、お願い・・・」 恥ずかしさから一希の涙が溜まっていく。ヴィンセントは一希が次の言葉を発するのを待っていた。 「ここに・・・ヴィンセントの・・・入れて・・・」 拡げた指が硬っている。一希はヴィンセントの答えを待つ。 「ヴィンセント・・・」 ヴィンセントは艶のある黒髪をかき上げるとフゥ、と溜め息をついた。 「私も、いつの間にか一希に甘くなったね。こんなに可愛い君に、ご褒美をあげたくなってしまうなんて」 そう言うとヴィンセントはスラックスを寛げると、既に勃起している自身を取り出し一希の後孔に当てがった。 「すぐに気を失っては駄目だよ」 一気に、ヴィンセントのモノが一希の体内にめり込むように入っていく。 「ーーっ!!」 一瞬白いものが一希の視界を走った。 中に彼のモノがドクドクと脈打ち、身体中快感による痺れが一希を襲う。 そのままヴィンセントは一希の腰を両手で掴み腰を振り上げる。 ヴィンセントの腰が動く度一希にスパークが走る。仰け反って歓喜の悲鳴を上げ、彼から享受する快感に一希は自然に下部腹部をキュッと締め付ける。 気持ち、いい・・・。 すごい。 今までヴィンセントとやっていたセックスの中で、一番気持ちいい。 もう、このままずっとこうなりたい。 快感に支配された身体は、ヴィンセントを逃がさないと言うようにさらに強く締め付ける。 「うっ、いいよ・・・一希。そうだ、それでいいんだ。それでこそ、私の番。私の愛おしい一希」 一希はヴィンセントの腰の動きに歓喜の悲鳴を上げるだけ。もう考えられるのはずっとこの快感を感じていたい事。 背後から貫かれて歓喜の悲鳴を上げる姿を見るとバックの方が一希は好きなのだろうとヴィンセントは思った。 正常位は一希の快感に支配された顔が見れるから自分としてはそれがいいがどうやら一希は恥ずかしさが優って快感を感じにくいようだ。乗馬位は顔は見えないが、快感で涙を出して歓喜の悲鳴を上げるので彼としては此方も悪くないと思っていた。 「一希」 ヴィンセントは一希の名を呼ぶ。しかし一希は快感でヴィンセントに答える余裕がない。 「此方を向いて」 繋がったまま一希を抱き上げると、唾液と涙でドロドロになった口腔内にヴィンセントは舌を挿入する。舌は縦横無尽に一希の口腔内を蹂躙する。 歯列を舐め、舌を絡め、歯茎を舐め・・・。 やはり甘い。魔界に来て一希の体調を危惧していたが、渇きが強く出ているが体液もさらに甘くなっていた。 「ふっ・・・うっ・・・」 一希自身もヴィンセントの舌に絡めようと舌を入れる。互いの舌を絡め唾液を吸い合い、一希自身もヴィンセントの唾液を喉奥にゴクン、ゴクンと取り込んでいく。 ドールハウスでのヴィンセントの調教が成果を見せていた。 二人はさらに夢中になって舌を絡め合う。まるで互いをもっと欲しいと言うように。 ヴィンセントの調教・・・それは一希に淫魔との性交が幸福に満たされている事を教える事だった。 一希との最初のセックスでヴィンセントは身体の相性は最高だった。手答えを覚えたヴィンセントは暴力的な支配ではなく、愛情に満ちたセックスで一希を幸福感で満たす事にした。 実際彼の見立ては功を奏し、嫌だと拒否をしても一希は表情から多幸感で満たされている事をヴィンセントに教えていた。 だから、自分が調教した。この子を幸せにできるのは淫魔王の自分だけだと徹底的に教え込んだ。その結果、調教を重ねていく毎に一希からも自分を求めていた。始めて一希が自分を求めた時、その表情は忘れられない歓喜そのものだった。 こんなに喜びを感じたのは、恐らく始めて。淫魔として生まれ、王として即位し、番を得てこれほどヴィンセントの心を満たしたのはこの子だけだった。 だから、この子は渡さない。人間界にも帰さない。一生私の番として私と共に生きていくのだ。 互いの舌が激しく絡まり合う。 舌の気持ち良さに反応して一希のペニスから、少しずつ精液が排出されている。腰に全く力が入らず、一希は今ヴィンセントに腰に手を回して支えられている。ヴィンセントの腰もさらにスピードが上がる。互いの息が荒々しく繰り返し、腰の動きで彼のスラックスが完全に脱げてしまったが、気にせず絶頂を昇ろうとする。 ぐいっ、とヴィンセントの腰が一希の奥を穿った。 「うっ!」 「ーーっ!うぅ・・・」 腹がヴィンセントの放った精液で満たされていく。この射精して体内に満たされていく感覚も一希にとって快感の一つに変換されてしまった。 激しい情交に一希はぐったりとベッドに沈み込むように眠っていた。ヴィンセントは一希の背中にキスを落とす。何度も情交を重ねるうち、自失した一希の身体を愛おしむように背中にキスを送るのは彼にとってのルーティンになっていた。 「愛おしい私の一希・・・」 ヴィンセントは久しぶりに一希と再会した時の事を思い出した。 一希と再会して私に突きつけたあのナイフ。あれには、確かに淫魔を消滅させる破邪の霊力が込められていた。 しかし、もう一つの匂いが染み込んでいた。 私がこの数百年、追い続けていた『奴』の匂いが。 明日の尋問であの男には口を割ってもらう。 やっと長年探していた奴の居場所を突き止められるのだから。

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