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第5話
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いつも通りの時間と同じ車両。
周りから視線を感じるのはいつものことで。
いつものようにスマホを開いて色んな人に連絡して…
そんなことしてたらいつものように触れる人がいる。
慣れてはいけないかもしれないけれどもうすっかり慣れてしまった。むしろ触れられない方が物足りない気がするのは自分がもう普通の人間ではないということ…
でもだからといって自分を否定するつもりはないけれど
今日の人は壊れ物を扱うようにそっと触れてくれて腰をきゅっと抱かれたときは不思議と安心感があって…
そういう風な特定の相手でもいると何か変わるのかな?そんなこと思うけどその可能性は限りなく0。
特定の人を求めることが自分にはできないだろうから。
自分さえいなければ人生が狂わなかった人だって大勢いるし救えたはずの人もいた。
自分の存在そのものが悪しきもので本当は存在なんてしなくていい人間ってことを自分は重々理解している。
「今夜?OK。お仕事終わったらね」
そう返信を終えた頃腰を抱いていた温かい腕が離れていく。きっとここが降りる駅なのだろう。
多くの人が降車していく姿を見送りながら今まで触れていた人があの人だったらラッキーだななんて人を見つめてたらふとその人がこちらを振り返り目が合った気がした。
「…んなわけないか…」
あんなに上級の男がわざわざこんな狭い電車の中で他人に触れる必要なんてないだろう。
きっと可愛い恋人がいてクリスマスも新年もその人と過ごして…いや…もしかしたら実は結婚してて子供もいてふわふわと自分には到底叶わない温かい家庭があるのかもしれないな。
見た目だけで判断しちゃダメだけどきっと変な人間じゃないと思う。
どこか上品で運転手付きの車に乗ってそうな風貌と柔らかい雰囲気の人だった。
あの人に抱かれるのを想像しながら今日は楽しもう。
そうして目的の駅に着いて足早に街を抜けた。
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