「聞こえちゃってたんだ？」 「ん…ねぇ…きゅーさん…これからも抱いてくれる？俺はきゅーさんの気持ちには答えられないけれど体くらいならいくらでも…慣れてるからさ。こんな色んな汚れに塗れた俺でいいならね」 樹優が自嘲気味にそう呟く。何もかも諦めたように寂しそうに微笑みながら 「樹優」 …その言葉は俺には地雷だ。高校の頃の学友にそう言って自分を粗末にするやつがいた。それだけは俺は許せない。それぞれの人生だ。色々な事情があるだろう。けれど… 「きゅー…さん…？」 思ったよりも低い声が出てしまっていた。それに驚いたように樹優が俺を見詰める。 「ねぇ。樹優。どうしてそんな言い方をするんだ？」 「え？」 「君にどんな事情があるのかはしらない。けれど慣れてるだとか体くらいだとか…汚れてるだとか…そういうのどうかと思う」 そう言うと樹優は表情を変えた 「痴漢するような人に諭される理由なんてないけど？勝手じゃない？あんた犯罪者だからね」 そう言われると何も言えない…けれど 「樹優。君はとてもいい子だ。俺は確かに犯罪者だし君に訴えられるのならどんな罰でも受ける。ただね、これだけは言えるよ。どう生きていくのか自分で選べるんだ。始めから諦めてはいけない。自分を粗末にしてはいけない。…自分を大切に…」 「うるさい。あんたなんかに言われたくない！！あんたに何がわかるんだよ！！俺は！！」 大声で叫ぶ樹優。それは彼の真の姿で…本当は救いを求めてる…そんな気がして…ぎゅっと抱きしめた 「何だよ！！欲情した？あんたほんっとうに変態だねー！」 「助けてって言って…」 「は！？」 「嘘でもいい。助けてっていって。」 「何言って…くっそ…この馬鹿力！！離せ」 「樹優。君は誰かに愛される資格がある」 「は？」 そういうと彼は動きを止めた。そんな彼の背中を撫でながら言葉を続ける。 「そして誰かを愛する資格もある。そして誰より自分自身を愛する資格があるんだ」