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第25話
「助…けて…」
樹優が俺の腕の中で小さく呟いた
「樹優」
「俺はっ…本当に…何も知らなくて…沢山の人を…苦しめて…みんなの苦しみの上で好き勝手に生きてきた…だから…俺は…俺っ…」
そこから自分がどれだけ苦しめてきたのか傷つけてきたのか…人の人生を台無しにしたのか…多くのことを言葉を詰まらせながら樹優が話してくれた。自分は愛する資格も愛される資格もないのだと…その姿がとても痛々しくて…
「樹優…苦しかったね…」
「きゅー…さん…何で…あんたが…泣くの?」
「樹優は何も悪くない…君の幼い大切な人も苦しんでいることにも気付けないでいるなんて…そんな理不尽なことあっていいわけない…こんなにも人のことを思える樹優が自分を許せないなんて…そんなのあんまりだ…もっと早く樹優と出会いたかった…そうしたらずっと抱きしめてあげられたのに…」
ねぇ…樹優…もう…いいよ…一人で苦しくならなくていいよ…自分を責めなくていいよ…俺が一緒に持つから…その苦しみも痛みも全部全部…俺じゃだめか?
「きゅー…さん?」
「樹優…俺が隣りにいたい…君のことを抱きしめていたいよ…」
「…ねぇ。きゅーさん。あんた…本当に愛する人がいるでしょ?教えてよ。俺も話したんだから…」
「…本当に愛する人ね…いたよ。君に出会うまでは俺はその人のことが忘れられなかった…」
樹優も話してくれたのだ…苦しい胸の内を…だったら俺も話すべきなのだろう
「…俺には幼馴染がいたんだ…彼女もね…君と同じようなことを言っていた…自分なんか存在しなければよかった…自分さえいなければ不幸になる人はいなかった…自分には愛される資格はない…とね」
彼女とは幼稚園の頃から一緒だった。
いつも花のように笑う人でみんなの人気者だった。
その彼女が中学の時。悲劇が起こった。樹優と同じように仲の良かった友人に好意を寄せられ何度も断っていた矢先の出来事だった
彼女が手に入らないのならとまだ幼い妹を拐かし家に連れ込みその幼い体に自身を覚え込ませた。そのすべての映像を彼女に送ったのだ。
その後彼女の妹はその友人のところへ足繁く通うようになった。初めて覚えたことに嵌ってしまったのだ
心配した両親は家族みんなで新しい土地へ移り住んだ。
子供だけでは到底行けないような場所へ。
そいつと引き離された妹は不安定になり家出を繰り返すようになった。
その姿を目の当たりにした彼女。彼女は俺の初恋の人でもあった。それなりに人気があった俺が唯一自分から告白した人だ。その彼女に告白したとき言われたのだ。
妹を壊してしまった自分には愛される資格はない…だからごめんなさい…と
俺はその時は何も言えなくて引き下がったのだけど…その数日後…彼女はこの世からいなくなった。
後に聞けば彼女は随分と前から俺に好意がありそれもあって断り続けていたらしい。
俺の気持ちを知りかえって追い詰めてしまったのだ…
妹を壊してしまった自分が好きな人と一緒に並んで歩くなんてそんなことは許されないのだと自分を責めたのだ
その後姉のことで妹は我に返り今はとてもいい人と出会って結ばれ子宝にも恵まれている
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