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第26話
「俺のせいで彼女は…」
「きゅーさん悪くないでしょ」
「樹優…そう言ってくれるのか…ありがとう…あの時俺は自分を責め続けていた…俺があの時告白なんてしなければ…もっと俺が強ければ…彼女の…全てを包み込めるような男であったならば…自分を否定する彼女を支えてあげられていれば…そういうのもあって…過剰に反応してしまうんだ…自分を否定してしまう言葉に…ごめん…君の事情も知らないで…俺は…」
「…あんた。まだその人の事好きなんだ?」
「…彼女を忘れようと色々な人と付き合った。それこそ体の関係だって一人や二人ではない…けど忘れられなかったよ…君に出会うまではね…」
「俺?」
「まさかその相手が同性になるとは思っていなかったんだけど…君に強烈に惹かれてしまった…犯罪者の俺の言葉なんて信じてもらえないかもしれないけれど…」
「…きゅーさん」
「ん?」
「傷を舐め合おうか?その方が俺はきゅーさんと一緒にいられるのかもしれない。一緒にいることがあんたの希望なんでしょ?あんたを利用させてくれる?俺は大丈夫だって証明してよ」
「…わかった。努力するよ」
そう言うと樹優がキスしてくれた。
どんな形でもいい…目の前の人を手放したくなかった。このまま自分自身を許せないままでいさせたくなかったんだ
「俺に出来る事…やってみるから」
それから彼との関係が始まった。
ベッドだけでなくどこかへ出掛けたいと言えば出掛けることだってあった
電車でのプレイは相変わらず毎日のように行って俺が休みのときは樹優が家に来てくれる。
気持ちはまだ俺のところにはない。けれど以前よりも樹優に近付いている気がしていた
「何か最近活き活きしてんな。とうとう出来たか?いい人」
「まぁな。」
「お前落とした人ってどんな人よ」
「すごく綺麗な人だよ」
「お前のお眼鏡にかなった相手かぁ…見てみたいもんだ」
「そのうちな」
本当は誰にも見せたくない。だって本当に綺麗なんだ…誰よりもきれいで繊細で…でもしっかり自分を持っていて前を向いて歩いている人…
時折辛そうな顔をすることもあるけれど…
でも…やっぱり自分自身を許してあげて欲しいと…切に思うのだ
樹優side
あの提案をしたのはただ気紛れだ。そうでないとならないと思う。
俺はきゅーさんを利用しているだけなんだ…
「きゅーさん。今日も家に行くね?」
『いいよ。待ってる』
あの後俺は多くの人と体を繋げることはしなくなった。
まぁ正確には…したものの何も得られなくなってしまったのだ。
どんな相手でも満足していた体が…心が…満たされなくなってしまったのだ
…きゅーさんしか俺の隙間を埋められなくなってしまったんだ
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