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第27話

「いらっしゃ~い。お兄さん初めてよね。うちのシステムはねぇ…」 俺は今日初めての店に来ている。内装は派手な装飾はないが落ち着いた妖しい雰囲気のバーだ。 ここのカウンターには美しく着飾った店主がいる。息を呑むほどの美しさだ。いつもとは違う見慣れない姿にも俺の心は反応する 「穂積さん」 「ふふっ…。来てくれて嬉しいわ」 そっと彼女?彼?が長い指で俺の手をなぞる 「っ…」 「…反応しすぎ…きゅーさん」 そっと耳元で囁かれる。樹優なのに不思議な感じだ。 ここに来ることになった理由は単純で樹優が全てを見てから俺の気持ちを整理するのもいいんじゃないかと言い出したからだ 客の年齢は幅広い。まだ未成年風な人もいればもう仕事も引退したような人もいる。全てが男性客でこの日限りの人を求めている人もいれば長きになるパートナーを求めている人もいるようだった。 俺がここに座って結構な人数に声を掛けてもらえ話も聞かせてくれたが決めた相手がいると伝えれば割とすんなり引いてくれる。 「いい客が多いんだな」 「そうねぇ。割と多いかもしれないわね。どう?好みの子見つかった?あの子。おすすめよ」 指を刺された方向を反射的に見ると小柄で可愛らしい感じの人がいた。彼はこちらの視線に気付くとニコリと笑ってゆっくりと側に来た 「お兄さん初めましてだね。よろしくね」 そういうと隣に自然に座り俺の膝の上に手を置き太腿を撫でた。その手に手を重ねそっと握る 「初めまして」 そう言って目を合わせ微笑むと彼はたちまち頬を朱に染めた 「…でもね。こんなに気安く触られるとさ…気分悪いからやめてくれるかな?」 そう言って彼の手を離した。彼はとても驚いたような顔をして固まった 「あらぁ…久くん。酷い男ねぇ。こんな美人が声をかけてくれたのに」 「穂積さん人が悪いなぁ。俺にはもう決めた相手がいるって知ってるでしょ?」 「あ…あの」 「…ごめんね。君はとても魅力的なんだけど…俺はその人じゃないと何も感じないんだ…せっかく来てくれたのに…ごめんね」 「あ…いえ…あの…ありがとう…ございました」 「え?何が?」   「僕が…こうして誘って…釣れなかった男っていなくて…。だから何かすごく新鮮で…。ずっと…調子乗ってた…だから…だね…お兄さんみたいに…ちゃんといるって伝えればよかった…ヤキモチ焼かせたくて他の人のところに行ったらさ…嫌われちゃったんだ…大切な人に…さ…もう…彼には…届かない…」 「まだ相手のこと想ってるんだ?」 彼は小さく頷く 「彼の居所はわかっているの?」 「はい…」 「君が知っているところに留まっているということはまだ可能性は0ではないかもしれない。俺は彼じゃないからわからないけれど…一度会ってみたら?」 「うん!そうします。ありがと…お兄さん」 そういうと彼はいそいそと帰り支度をして店を後にした。 「穂積さん。あんた知ってたの?」 「さぁねぇ。ただ彼のお相手は知ってるわよ…うまく行く気がしているわ」 そういうと彼が出ていった扉を聖母のような笑みで見つめていた

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