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第33話
「忘れ物ない?」
「うん。大丈夫」
樹優の荷物は思ったより少なくて驚いた
「少なくない?」
「そ?だって旅館には浴衣あるしタオルもあるしアメニティも充実してるしたくさん荷物持ってったらお土産買えないから中身開けときたいし」
「ふふ…可愛い」
「え?」
樹優が本当にわくわくしているのが伝わってきてすごく可愛かった
「よかった。無理させたかなぁって思ってた」
「え!?何で?俺すごく楽しみだったんだよ!!」
「うん。ありがと」
「なんでお礼?」
「なんでかな?」
並んで歩くのも随分と馴染んできた。キラキラした笑顔で楽しみにしていることを沢山話してくれる樹優がたまらなく可愛くてそのまま抱き締めてしまいたいけどまだそういうのを許される間柄じゃないこともよくわかってて
空港に到着すると樹優がキョロキョロとあたりを見渡していた
「すげぇ…空港…初めて来た」
「え!?そうなのか?」
「うん!!修学旅行はバスと新幹線で移動だったし遠征も飛行機なんて使わなかったし。すげぇ…すげぇ…」
「…樹優…」
「何?バカにしてんの?」
「ううん。感動してる。樹優の初めて貰えた」
「何それ…ばぁか…」
ほんのり頬を染めて言う樹優を撫でて搭乗手続きを終え乗り込む。
樹優は緊張しているのか俺の手をずっと握ったままソワソワしていた
「樹優大丈夫?」
「大丈夫じゃないかも。だってさ!あんなに大きな鉄の塊が空飛ぶんだよ?」
「そうだねぇ」
「…ガキ臭いって思ったでしょ?」
「思わないよ。可愛いなぁって思っただけ」
「これ落ちない?」
「そればかりはわからないなぁ…でもこのまま死んでもいいかなぁって思ってはいる。だって最期まで樹優と要られるなんて幸せだからさ」
「縁起でもないこと言わないでよ」
「本音だよ。他の誰かじゃなくて死ぬときは樹優が側にいて欲しい」
「やだ。まだ死にたくないもん」
「俺だって嫌だけどね。まだ樹優とやりたいことがあるしさ。大丈夫だよ。そんな簡単に落ちたりしないから」
「うん…」
俯く樹優をぽんぽんと撫でる。飛行機は無事空港に到着したけど樹優が俺の腕に絡みついて離れてくれない。
相当怖かったのだろう
「きーゆ。大丈夫?」
「大丈夫…ちゃんと生きてる…」
「そうだね。ここからはレンタカー借りて宿に向かうよ。機嫌直して?」
「…じゃあ…俺…運転する!」
「え!?」
「なんだよ」
「樹優…運転できるの?」
「失礼だな!!出来るし!!なんなら得意な方だし!!」
「そんなプリプリしないでよ。じゃあお願いします…」
「あぁ!信用してないでしょ!?」
「してなくないし!」
「日本語変だし…ぷっ…あはは!俺たち何言ってんだろ!」
「ほんとだね」
そうしてレンタカーの受付カウンターへ行き手続きをしたのだがそこで新たな事実を知るのだ
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