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第37話
「もう!きゅーさん!」
「…」
「はぁ…」
樹優が深くため息をついた。それにビクリと反応してしまう
「ふふっ…叱られた小さい子供みたい」
そう言いながらそっと俺を抱きしめて頭を撫でた
「本当はさ…もっと…ちゃんとしたとこで話そうと思ってたんだけどさ…」
もうこんな関係やめよう…そう発せられるのが怖くて耳を塞ぐ
「きゅーさん…聞いて」
俺を抱きしめたままの樹優に耳元で囁かれる…
「ねぇ。きゅーさん。俺に貴方を好きにならせて…」
「え…」
今の言葉を理解したくて顔を上げる。真剣な表情で俺を見つめる樹優と目があった
「やっと見てくれた…きゅーさん。あのね。俺がお父さんに会いに行ったのには理由があるんだ。」
「…うん」
「俺の過去を全て話してきた。今の仕事のこともね。その上できゅーさんを好きになってもいいかと尋ねてきたんだ…。きゅーさんの家が大きいのは名前を教えてくれて少しして調べたから知ってた。だからこそ俺はますます貴方を好きになることが怖くなった。あれだけの大企業の御曹司が俺と一緒にいると何を言われるのかわからないから。俺はきゅーさんちを壊したいわけではない。そういう大企業ってさ俺の偏見だけどさ…やっぱあるじゃん?周りの目…好意的なものもその逆もたくさんね。大企業の長男であるきゅーさんが同じ男である俺をパートナーに選ぶなんて以ての外じゃん!」
「樹優…俺の親父や祖父や雇われている社員たちはそんな偏見を持つような人はいない。父はそういう人だ。色々なあり方があっていいとそういう人だ。見くびってもらっては困る」
「ふふっ…親父さんもそう言ってた。そっくりだね。それを言ったときの親父さんも凄くかっこよかった。嘘のない真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくれてさ。」
「それは…妬ける…」
「あははっ!俺の一番は出会ってからずーっときゅーさんだから」
「え?」
「…俺さ。頑なに好きじゃないって…利用してるって…自分に言い聞かせてた。今でも俺の思うまま進んでしまおうとすることに迷いはある…けどさ。もう俺はきゅーさん無しじゃ生きられないから…誰にもきゅーさんはあげたくないから…だからさ…俺をあなただけのものにして?そしてあなたを頂戴…好きなんだ…どうしようもなく…あなたが…他でもない…久則さんが…」
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