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第38話

樹優の言葉がすぐには理解ができなくて固まってしまう 「きゅーさん?もう…遅いかな?」 言葉は出ないけどぎゅっと抱きしめ返して気持ちを伝えようと口を開くけど出るのは俺の嗚咽だった 「あぁ!泣かないでよ…待たせてごめんね…」 ウンウンと頷くことしかできない。いい年をした大の男がこんな風になるなんてお笑い種だ 「待たせすぎてごめんね。好きだよ…ねぇ。キスしていい?」 そう言うとやさしいキスをしてくれた。   「ねぇ…きゅーさん…しよ?恋人同士のセックス」 父たちが来る前まで風呂場で交わり部屋でも交わっていた 何もかもがこれまでと違う気さえしてくる。あぁ…これは夢ではないだろうか…俺の見た都合の良すぎる幸せな夢… けれどそれが現実だと教えてくれる樹優の官能的な表情に何度味わっても足りないくらいに貪り尽くした。 父たちがくるまで後一時間。 「きゅーさん…嬉しかったけどさ…ちょっとは加減してよ…今からお父さんたちくるのにぃ」 「ごめん…」 絶賛反省しながらマッサージ中である… 「あ!そうだ。ちょっと起こして」 そっと起こしてあげるとゆっくり立ち上がり荷物の中を探っていた。 「変わりに探そうか?」 「んー大丈夫。えっと…あった!」 樹優が出したのは小さな紙袋だった 「きゅーさん。誕生日おめでと」 「え…?」 「もしかして自分の誕生日忘れてたの?」 「うん…忘れてた」 「あははっ!もう!きゅーさんが生まれた大切な日だよ!忘れないでよ」 最近は誕生日なんて祝ったりしない。いつも過ぎてから気付いていたのだ。 「今日ね。きゅーさんに俺の気持ち伝えようって決めてきてたの…本当は初めて電車で触れられたときから顔も何もわからないのにその触れる手を恋しく思ってた。その時点でもうきゅーさんに落ちてたんだよね」 「それ…俺じゃなかったら…」 「きゅーさんの優しい手だったからだよ。他の人はさやっぱ違うもん。何だかしっくりきてさ。こんな人ならって思ったら毎日同じ車両で同じ時間に乗ってた」 「待ってたの?」 「うん。待ってた。初めのとき降りていった乗客の中に俺のタイプドンピシャの人がいてさ。その人ならなぁって見ていた相手がまさか目の前に来て俺を連れてってくれるなんて思ってなくて本当俺運がいいなぁって思ったんだよね。好きなのに認めてはいけなくてけどどうしても一緒にいたくて…毎日の様に会いに行った。凄く楽しかったんだよ」

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