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第2話
久遠が目を見開き、俺を見ていた。
やってはいけないことをしてしまった……そんな子供の目。怒られる、叱られる、その恐怖に震えている。
俺の口の中にはまだ粘っこいものが残っていた。本当ならすぐにでも口をゆすぎ、うがいをし、歯磨きをしたい。
しかし、それをしてしまっては、この子が傷つくんじゃないだろうか。
『先生は、ボクを汚いって思ってる』
それがこの子のトラウマになるかもしれない。だから、口の中にたまっていく唾液を吐き出したい気持ちを我慢した。
「え、えーっと」
何を言えばいいか分からず、とりあえず声を出してみる。その途端、久遠はビクッと体を震わせた後、部屋の出口へと走り出した。ドアを開けようとするが、鍵をかけられていて、開かない。
下に何も履いていないのに、この子はそのまま外に出るつもりなんだろうか。その恥ずかしさよりも、俺に怒られる方がつらいのかもしれない。
「お前、そのまま出るつもりか。先生、怒ってないから大丈夫だって」
久遠の腕を取って引き寄せる。俺を見る怯えた目。それに向けて、にっこりと笑って見せた。
「ちょっと、こすりすぎたかな。ごめんな。ほら、もう一度拭くぞ」
ぽんぽんと軽く久遠の頭を触れるように叩く。そしてまたタオルを構えてしゃがんだ。
さっきよりも軽く、おちんちんを拭いてあげる。射精したばかりだというのに、スティックのりほどの大きさでまた硬くなっていた。
剥けていない皮から、紫色のさきっちょが少しだけ頭を出している。
「痛いか?」
そう尋ねると、久遠は首を軽く横に振った。
本当なら、濡れた股間をタオルで拭くくらい自分でできるはず。久遠は極度に大人しすぎるということ以外、学校生活は普通に送れているし、成績もいい。
でもなぜか、お漏らしをした時だけ、何もできずにつったったままになってしまうのだ。
「ごめんね、先生」
突然、久遠が口を開いた。本当に久遠が言ったかどうか疑ってしまうほどに小さな声だ。
授業中に当てた時すらうつむいて何も答えないだけに、久遠の声を聴いたのは初めてかもしれない。子供らしい、透き通った高い声。
「あ、ああ。気にすんな」
久遠を見上げ、もう一度笑ってみせる。久遠がおずおずと手を伸ばし、俺の顔に触れた。ついたままの精液を指で拭ったようだ。
「ありがと」
俺がそう言うと、久遠が突然、涙を流し始めた。
「お、おい、大丈夫だ、大丈夫だって。だから、泣くな」
なんでだよ……心の中で戸惑いながら、中腰になって久遠を覗き込む。その途端に、久遠は俺に抱き着いた。
勘弁してくれよ……そう思いつつも、頭を軽く撫でてやる。
久遠はしばらくの間、俺にしがみついていた。
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