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第12話 そして次の月曜日

 「おはよう」  月曜日、会社に行くと何故か不機嫌な大野がいた。  「おはよう、どうした?」  「昨日さ、秘書課の女子と出掛けたんだよ。んで見事に玉砕、そもそも俺は尾上の当て馬だったってわけ」  「そうなのか……」  他に答えようもない、昨日の夜奏太は俺のところにいたと言えるわけもない。  「更にさ、あいつ途中で体調悪いって言い出して帰ったもんだから。女性軍はシラケちゃって、俺の立場はどうなるのって……」  奏太は俺の顔を潰さない為に行ったと言っていたのを思い出した。  「そうか、悪かったな」  俺が大野に謝った瞬間に後ろから声をかけられて驚いた。  「なんで、瑞樹が謝るの」  え……奏太?奏太の声がする。振り返ると、奏太がそこに立っていた。  「お前、何してんの……」  営業部のフロアにいるはずがないのに。  「あ、大野さん。昨日はすみませんでした。もうすっかり元気になりましたので、ご迷惑をおかけしました」  そうか、大野に謝りに来ただけかと納得した。何を俺は焦っているんだろう。  「それと、瑞樹にも昨日は迷惑かけたよね。体調大丈夫?昨夜は、かなり酔っていたみたいだけれど」  「何?お前ら昨日の夜飲んでたの?具合大丈夫だったのか?」  「ええ、夜ちょっと飲みたくなって」  「そうなのか?なんだよ、木村。俺を誘わずに?全くつれないなあ。お前ら単なる同級生って言ってなかったっけ、仲良いじゃん」  「単なる同級生……そう瑞樹は言ってたんですね。まあ、そう言えばそうですかね。結構仲が良かったと思っていたのは俺だけだったみたいですね」  なんで奏太は、こんな頭痛の種を蒔いているんだろう。  「そろそろ始業時間だから、デスクもどるね。じゃあ、瑞樹また」  そう言って奏太はさっさと、エレベーターホールへと向かって行こうとする。  「待って」  慌てて奏太を追いかける。  「何?大野さんおいてきていいの?」  「え?大野?なんで?」  小声で奏太が、「やっぱり違うのか」と、独り言をいうのが聞こえた。  「で、何の用?」 「あのさ、昨日の夜…まさか……」 「何を気にしていんだか、会社で話したいの?聞きたい?」  「いや、その……」  「瑞樹はどっちがいい?何かあったって言って欲しい、それとも何もなかったと行って欲しいの?聞きたい答えをあげるよ」  俺の聞きたい答え……それはどっちなんだろう。それりょり、事実はどうなんだ。  エレベーターのドアが開いて、奏太は「後で」と俺に言い残してその箱の中に飲み込まれていった。  「後でって……」  「木村!電話。外線3番、藤銀行の佐藤さん」  大野に呼ばれて、落ち着かないままデスクへと戻った。

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