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第24話 帰る場所

   タクシー代を渡したということは、帰れというサインのはず。  俺もそのつもりで渡した、なのに奏太に帰ると言われて苛立つ。奏太の傷ついた顔を見て、自分が傷つけたと分かっていても落ち込む。  自分でも元々身勝手だとは思うが、ここまで情けないとは思わなかった。  奏太……帰るのか……どこへ?  俺は……お前の住んでいる場所さえ知らない。  「始発で…始発で帰れば……」  「え?何?それ」  「いや、タクシー捕まらないかもしれないし。今帰っても始発で帰っても同じ事だろう」  「瑞樹、全く違うよ。わかってるの?朝までどこで過ごすのか、誰と過ごすのか。違うだろう」  「明日、会社に間に合えば同じだ」  「同じじゃない、何を言ってるか自分でわかってないの?」  奏太はすっかり呆れた顔をしている、自分でも馬鹿なことを言っていると言う自覚はある。  「一晩を俺と過ごすって、その意味をわかって瑞樹が言っているのなら俺は残るよ。瑞樹が決めて、どうしたいのかを」  「俺は……奏太に側にいてほしい」  「そう、じゃあ残る。それでいいんだね」  「……」  「ひとつだけ確認させて、それは今だけ?それとも結婚するまでの繋ぎ?」  そう言われて、見合いして結婚すると母親に宣言して来たことを思い出した。でも何故奏太が俺の見合いの話を知っているのかわからない。  「誰にも言ってないのに、何故俺の見合いの話を奏太が知っているんだ?真田さんに直接聞いたのか……」  「真田さん…それ誰?見合いって……いうか、恋人いるって以前、俺に言ったろ」  確かに突然現れた奏太に無性に腹が立って、いもしない恋人がいると言ったかもしれない。真田さんも覚えていないのか、高校の時お前のことが好きだった女子だよ。  「恋人…そんなのいない。確かに見合いはしたし、結婚すると母親にも言ったけれど」  「どういうこと?見合いで、結婚相手を探しているってこと?」  確かにそうなる。  「結婚するのには相手がいなきゃできないだろ」  俺は何を言い出しているのだろう。

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