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第4話
「母さんのことなんだが」
「あー、ごめん!」
明希みたいにぶん殴られる前に、俺は率先して謝った。
「母さんを傷つけたのは悪かったよ。でも、実は俺にも考えがあって……」
三石に言われたことを打ち明けると、父さんは意外にもすんなり納得した。
「マザコン扱いされるのは、腹が立つもんだ。父さんも、言われた経験があるからわかる」
「え、そうなんだ?」
ああ、と父さんは苦々しい表情を浮かべた。
「母さんと俺のお袋が似てるからって。そんなはずは無いだろう。母さんの方がずっと魅力的だというのに」
言われてみりゃ似てるな、と俺は密かに思った。口には出さなかったが。
「まあ、それはさておき。それとこれとは別問題だ。親の尊敬できる部分を真似るというのは、決して間違ったことじゃないぞ? 逆に、欠点は反面教師にすればいい」
わかった、と俺は素直に頷いた。
「わかったならいい……。ああ、そうだ。ちょうどいい機会だ、望大に渡そうと思っていたものがある」
父さんは、俺にカプセルの小箱を渡した。俺は、首をかしげた。
「抑制剤? 何でアルファの俺に?」
「それはアルファ用抑制剤だ」
父さんは、真面目な顔で言った。
「お前ももう15歳だ、いつも携帯しておけ。アルファのたしなみだ」
「うん……」
いまいち実感は湧かないが、俺は受け取った。すると父さんは、別の箱を出してきた。
「こっちもだ。オメガ用抑制剤。発情したオメガと遭遇したら、飲ませてあげるといい。フェロモンのせいで、お互い望まない結果を招いて、後悔しないようにな?」
「はあ……。オメガと接する機会なんてあんまり無いけどな……」
俺の学校は、教師も生徒もアルファが圧倒的だ。たまにベータがいるくらい。身近にオメガなんて……。
――いや、いるか。
その時ある人物の顔が頭をよぎり、俺はその箱を受け取ったのだった。
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