5 / 58

第5話

 翌週の新聞部は、大いに盛り上がった。次号の内容を企画する時はいつもだが、今回はOBのインタビューをすることになったからだ。科学者となったその先輩は、その道で有名な賞を取ったのだそうだ。取材では何を聞こうか、と皆興奮気味だった。  その中で俺は、三石が静かなのに気づいた。いつもは、先輩部員たち相手でも、臆せず意見を言うというのに。よく見れば、何だか顔も赤い。気になった俺は、声をかけた。 「三石、具合でも悪いのか?」 「い……、いえ! 大丈夫です」  三石はあわてて首を振ったが、明らかに様子は変だった。  ――一人で帰れるかな。部活が終わったら、もう一度声をかけてみよう……。  しかし部活終了後、俺は顧問に呼び止められた。話をしている間に、三石はいつの間にか帰ってしまっていた。  ――ま、仕方ないか。  帰れたのなら、大丈夫だろう。調べ物があったこともあり、俺は図書館へと向かった。学者に取材するのだから、少しはその分野の知識を身に着けておかないといけない。一時間ほど専門書を読みふけった後、俺はトイレに立った。  ――ん?  人気の少ない男子トイレの前に来た時、俺は何だか違和感を覚えた。トイレルーム内は暗いというのに、何人かがいる気配がするのだ。ひそひそという囁き声も聞こえる。 「ここでやんのか?」 「人なんか来ねえよ。万が一来たとしても、こいつが誘ったって言えばいいじゃん」 「まあな。こんなとこでフェロモン出してる方が悪いんだし……」  俺は、バンとドアを開けた。中にいた男子生徒らが、いっせいに俺の方を振り向く。名前は知らないが、一年のメンバーだった。皆、アルファだ。そして、ぐったりした様子で彼らに取り囲まれていたのは……。 「三石!」  俺は、とっさに奴らを押しのけると、三石の腕を引いて救い出した。

ともだちにシェアしよう!