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第5話
翌週の新聞部は、大いに盛り上がった。次号の内容を企画する時はいつもだが、今回はOBのインタビューをすることになったからだ。科学者となったその先輩は、その道で有名な賞を取ったのだそうだ。取材では何を聞こうか、と皆興奮気味だった。
その中で俺は、三石が静かなのに気づいた。いつもは、先輩部員たち相手でも、臆せず意見を言うというのに。よく見れば、何だか顔も赤い。気になった俺は、声をかけた。
「三石、具合でも悪いのか?」
「い……、いえ! 大丈夫です」
三石はあわてて首を振ったが、明らかに様子は変だった。
――一人で帰れるかな。部活が終わったら、もう一度声をかけてみよう……。
しかし部活終了後、俺は顧問に呼び止められた。話をしている間に、三石はいつの間にか帰ってしまっていた。
――ま、仕方ないか。
帰れたのなら、大丈夫だろう。調べ物があったこともあり、俺は図書館へと向かった。学者に取材するのだから、少しはその分野の知識を身に着けておかないといけない。一時間ほど専門書を読みふけった後、俺はトイレに立った。
――ん?
人気の少ない男子トイレの前に来た時、俺は何だか違和感を覚えた。トイレルーム内は暗いというのに、何人かがいる気配がするのだ。ひそひそという囁き声も聞こえる。
「ここでやんのか?」
「人なんか来ねえよ。万が一来たとしても、こいつが誘ったって言えばいいじゃん」
「まあな。こんなとこでフェロモン出してる方が悪いんだし……」
俺は、バンとドアを開けた。中にいた男子生徒らが、いっせいに俺の方を振り向く。名前は知らないが、一年のメンバーだった。皆、アルファだ。そして、ぐったりした様子で彼らに取り囲まれていたのは……。
「三石!」
俺は、とっさに奴らを押しのけると、三石の腕を引いて救い出した。
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