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第8話

「そりゃ、一人にするのは危険だし……。ええと、これは、念のためだ。アルファ用抑制剤」  見られたのはバツが悪かったが、俺は仕方なく説明した。 「へえ……、そんなのがあるんですね」  知らなかったらしく、三石は興味深そうにしている。無性にきまりが悪く、俺はヤケ気味にわめいた。 「だから、念のためだって! お前をどうこうしたいわけじゃないから……。親父の教えだよ。……何だよ、今度はファザコン呼ばわりする気か?」  乱暴にペットボトルの水で飲み干せば、三石はちょっと赤くなった。 「……すみません。先週は失礼なこと言って」 「別に。でも一応言っとくけど、母親が俺に教えるのは、記者としての基本姿勢だけだから。部活動はノータッチ。俺の書いた記事だって、全然読んでない」  本当である。何よりうちの母さんは、自分の記者活動に熱中していて、それどころではないのだ。ちょっと暇ができれば、父さんとイチャイチャしてるし……、って、まあそれはいい。 「あー、いや……。そんなつもりで言ったんじゃ……。何て言うか、先輩のお母さんが羨ましかったんです。それだけ先輩に影響を与えてるんだって思うと……」  三石は、何やらごにょごにょ言っている。よく意味がわからず、俺は首をかしげた。

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