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第3話
「まあ、まあ」
なだめるように、陽介が割って入る。
「取りあえずお前たちは、それぞれのパートナーを連れて来なさい。そしてじっくり話し合おう。そうしないと、始まらないだろう?」
最後の台詞を、陽介は蘭を見て言った。仕方なく、蘭は頷いた。
「今日はもうここまで。でも今後は、気をつけるように。妊娠、出産はオメガにとって大きな出来事なんだからな? くれぐれも、無責任な真似はするんじゃないぞ」
キッと見すえれば、海と望大は素直に謝った。そしてそそくさと、部屋を出て行く。二人きりになると、蘭と陽介は、思わず顔を見合わせた。
「お前、何でそんな冷静なんだ?」
蘭は尋ねた。
「二人とも、しっかり将来のビジョンを持っているじゃないか。あれなら子供が産まれても大丈夫だろう」
何だか陽介がのんきすぎる気がして、蘭は眉をひそめた。
「そうかなあ……。てか、いつの間に、海を秘書にする話になってんだよ? 俺、聞いてないぞ」
「君だって、明希と稲本のことを内緒にしてたろう」
陽介がしれっと答える。蘭は、口をとがらせた。
「何だよ、仕返しかよ」
「お互い様、というやつだ。……とにかく、もう少し息子たちのことを信用してやれ。君と俺の子なんだ。アルファとしての自覚と責任感は、十分あると思うぞ?」
「据え膳食った上に、うなじまで噛んだ奴に言われても、説得力無いんだけど」
蘭は、じろりと陽介をにらんだ。
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