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第4話
「あれは、俺たちが『運命の番』だったからだ」
ぬけぬけと言う陽介を無視して、蘭は続けた。
「俺はやっぱり、二人の相手のことが心配だな。あやかちゃんは、コミュニティカレッジ(二年生大学)で今年卒業だからまだしも。三石君は入学したとたんに休学なんだぞ? 気の毒だとは思わないのかよ?」
「そうかな」
意外にも陽介は、首をかしげた。
「三石君がどう思っているかはわからないぞ? 確かに君の言うとおり、妊娠、出産はオメガにとって大きな出来事だ。でも、君はどうだった? 双子を身ごもった時、後悔したか?」
「……いや、まさか……」
蘭は、はっとした。
(大好きな陽介の子だもん。嬉しい以外の思いは無かったよ……)
「だろう?」
陽介が微笑む。
「だから、そう悲観的になるな。来年は、一気に孫が三人だ。にぎやかでいいじゃないか」
明希もまた、最近妊娠が発覚したのである。
「まあな……。あー、俺たちもついに、おじいちゃん、おばあちゃんか。年取ったよな」
「君はいくつになっても綺麗だよ」
陽介が、抱き寄せてくる。彼の体温に浸りながらも、蘭はまだ見ぬ孫の顔を想像したのだった。
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