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第13話
とたんに顔をくもらせる蘭を見て、三石が首をかしげる。
「どうしました? 産科にいる時から、何だかお元気なかったですよね。あの、失礼ですが、赤ちゃんに何かあったとか?」
「いや、そうじゃないんだよ。それがさ……」
蘭は、先日望大を叱りつけた話を打ち明けた。三石になら、何でも話せる気がしたのだ。
「そういう事情とは知らなかったから、無責任だって怒っちゃってさ。どの面下げて、弟か妹ができるよ、なんて言えってんだ」
「そうですかねえ? 先輩、喜ぶと思いますけど。下に兄弟欲しかったなあ、なんて漏らしてたこともありますし」
「本当か?」
蘭は、身を乗り出した。三石は、にこにこしながら頷いた。
「はい。中学の頃に」
(昔すぎだろうが! こんなにでかくなってから、兄弟できるとは思ってないだろうよ!)
とはいえさすがに三石にそこまでは言えず、蘭は押し黙った。取りあえずは陽介に話すか、と思いながら。
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