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第3話
「遅くまで付き合っていただいて、すみません」
チラと時計を見ながら、三石は申し訳なさそうな顔をした。
「別にいいって。……でも、さすがに腹減ったな。俺、晩飯ついでに食べてくわ。お前は?」
「僕も、そうします」
ウェイトレスを呼んでピラフを注文すると、三石も同じ物を選んだ。それも、俺と同じ大盛りだ。俺は、目を丸くした。
「おい、ここのは結構量が多いぞ。食えんのか?」
「これくらい、食べられますよ」
三石は、ちょっと頬を膨らませた。
「それに、記者って体力が要りますもんね! しっかり食べて大きくならなきゃって、いつも思ってるんです。……いいですよね、先輩は体格が良くて」
(……いや、アルファの俺と比較しても仕方ねえだろ)
羨ましそうに俺を見つめる三石に、俺はやや戸惑った。
「そうか……? ま、お前はもうちょっと頑張らなきゃな。ちっこすぎて、店に入った時、どこにいるのかわかんなかったもん」
わざとからかってやれば、三石はますます口をとがらせた。
「ひどいですよ。これでも、筋トレしてるのに! まあ、でも、何かスポーツを始めた方がいいですかね。何にしようかな……」
「……護身術はどうだ?」
ふと、口をついて出た。母さんがやっていたのを、思い出したのだ。悠さんが言うには、ナイフを持った男相手に戦って、勝ったんだとか。すげえなと思う以前に、何でまたそんな状況に陥ったのか、俺は不思議でならなかった。でもこれだけは、母さんも悠さんも、決して話してくれないのである。
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