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第10話

 それから一週間後。放課後、帰り支度をしている俺の所へ、深沢がやって来た。 「ミヒロ。カイと一緒にキャンプに行った時の写真があるんだけど、見る?」 「あ、見たい」  俺は、つい身を乗り出してしまった。深沢は、あれ以来頻繁に俺のクラスを訪れては、話しかけてくるようになった。深沢と海兄さんが通っていた高校には、留学生が多く在籍しており、そのコミュニティがあったそうなのだ。二人は互いのことをよく知っているらしく、彼女は兄さんのいろんな話を聞かせてくれた。 「何か、満喫してるって感じ」  緑を背景にのびのびと笑っている海兄さんの写真を眺めて、俺はつぶやいた。父さんに反抗して留学した手前だろう、兄さんはほとんど家族に連絡をよこさないのだ。元気そうな姿に、俺はちょっと安心した。 「時々、ホームシックっぽくなってたけどね。でも、それを悟られたくないから、あえて実家とは連絡を取らないようにしてたみたい」  深沢は、朗らかに笑った。 「カイは、本当は家族思いだよ。特に妹さんのことは、しょっちゅう話題にしてた」 「――何だよ、弟のことは?」  俺は、頬を膨らませた。 「んー、聞いたこと無いなあ……。って、うそうそ。たまには、口にしてたよ?」  深沢が、悪戯っぽい笑みを浮かべる。まあ今に始まったことじゃないけどな、と俺は思った。海兄さんは、度を越したシスコンなのだ。  深沢は、懐かしげに写真を見ていたが、ふと時計を見た。 「あ、習い事の時間だ。じゃあミヒロ、また今度ね」  ああと頷くと、深沢はあわただしく教室を出て行った。すると友人の中川が、待ち構えていたようにやって来た。深沢の後ろ姿をチラチラ見ながら、俺に囁く。 「おい、どうなってんだ? 彼女と付き合ってんのか?」

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