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第14話

「白柳? おーい、白柳!」  スタスタと歩き去って行く俺を、中川があわてて追いかけてきた。 「来たばっかなのに、もう帰るのかよ?」 「邪魔しちゃ悪いだろ。チラッと様子は見たから、もうそれでいい」 「はあ……。ま、前部長が突然現れたら、皆興奮しちまうだろうしな」  不審そうな顔をしつつも、中川は取りあえず頷いた。 「せっかくだから、俺はもう少し構内をぶらぶらしてく。白柳は?」 「もう帰る」  素っ気なく言い捨てると、俺は足早に中等部の建物を出た。何だか、無性にイラつく。  ――やっぱり白柳先輩のアドバイスは、すごく参考になります……。  三石の台詞が蘇る。俺は、思わずつぶやいていた。 「俺でなくてもいいんじゃんか」  村井の指導で満足なら、わざわざ俺を頼る必要なんて、なかったではないか。それに、と俺は口を曲げた。村井に頭を撫でられた時の、笑顔を思い出したのだ。 (警戒心無さ過ぎだろ)  村井は、アルファなのだ。もっと注意しろよ、と言いたくなる。第一、アルファにそんなスキンシップを許すくらいなら、俺の護身術発言なんてどうってことないではないか。傷つけたのではないか、とあれほど悩んだのが、馬鹿みたいに思えてきた。 (もういい。知るかよ)  俺は、鞄の取っ手をぎゅっと握りしめると、足早に校門をくぐり抜けた。

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