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第15話

 その翌日の放課後、またもや深沢がやって来た。 「ミヒロ、ちょっと時間いいかな?」 「兄さんの話なら、別の日にしてくれ。今日は急いでるんだ」  俺は、素っ気なく答えた。別に用事なんて無いが、誰とも話したい気分ではなかったのだ。 「カイの話じゃないよ。すぐ済む話なんだけど……。じゃあさ、歩きながらはダメ? 途中まで一緒に帰ろう?」  深沢は、いつになくしつこかった。俺は、眉をひそめた。ただでさえ、あらぬ噂が流れているというのに、一緒に帰ったりしたら何と言われることか。そりゃ、架空の彼女で女避けをしていたわけだが、実在の女子を彼女と誤解されるのは嫌だった。第一、深沢にも失礼だろう。 「すぐ済むなら、ここで言えよ」 「うーん、それはちょっと……」  どうも煮え切らない。俺は、だんだんイライラしてきた。いつもの深沢なら、もっとテキパキ話を進めるのだが。何だか妙だな、と俺は思った。 「だったら、新聞部の部室で話すか?」  今日は、部活は休みなのだ。人に聞かれたくなさそうな深沢を慮って、俺は無人の部室を提案した。ありがとう、と彼女が微笑む。 「あ、でも俺、職員室へ寄らないといけないんだった。先に行ってて」 「わかった。じゃあ、待ってるね」  深沢は、ほっとしたように踵を返すと、教室を出て行った。  十五分後、用事を済ませた俺は、部室へ入った。中では深沢が、一人待っていた。何やら、神妙な面持ちだ。 「お待たせ。話って……」 「単刀直入に言うね」  深沢は、俺の目を見つめた。 「私、ミヒロが好き。付き合ってくれない?」

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