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第2話

「……蘭? どしたの?」  蘭の顔色が変わったのに気づいたのか、悠が眉をひそめる。迷ったが、蘭は正直な所を話した。今度は、悠の顔色が変わる番だった。 「ヤバイよ、それ! 誰か他の奴の手料理ってことじゃん!」 「いや、支援者の差し入れかもしれないし……」 「ただの支援者が、そんな家庭的なもん贈るかあ? 一体、誰が……、あ」  悠は、ピンときたような顔をした。 「僕の産休中、代替で入ってる子かも。若いオメガの女の子なんだけど、陽介先生の大ファンみたい」 「決めつけるのはどうかと思うけど……」  とは言いながらも、蘭は不安になってきた。求職中のオメガたちの助けになりたいという陽介の方針で、事務所のスタッフは、ただでさえオメガばかりなのだ。しかも、ファンだという若い娘。そばにいて、心が揺らいだりはしないだろうか。  ――最近、Hもしてないしな……。  父親の死の真相がようやくわかりかけてきたこの頃、蘭は夜中まで調査にかかりきりなのだ。陽介はそれを察してか、強引に求めることはしてこない。だが、欲求不満なのは事実だろう……。 「もう! 蘭が及び腰なら、僕が偵察するよ。自分の代替で入った子だから、何か責任も感じるしさ」  妙に律儀なところのある悠は、大きくうなずいたのだった。

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