55 / 58
第2話
「……蘭? どしたの?」
蘭の顔色が変わったのに気づいたのか、悠が眉をひそめる。迷ったが、蘭は正直な所を話した。今度は、悠の顔色が変わる番だった。
「ヤバイよ、それ! 誰か他の奴の手料理ってことじゃん!」
「いや、支援者の差し入れかもしれないし……」
「ただの支援者が、そんな家庭的なもん贈るかあ? 一体、誰が……、あ」
悠は、ピンときたような顔をした。
「僕の産休中、代替で入ってる子かも。若いオメガの女の子なんだけど、陽介先生の大ファンみたい」
「決めつけるのはどうかと思うけど……」
とは言いながらも、蘭は不安になってきた。求職中のオメガたちの助けになりたいという陽介の方針で、事務所のスタッフは、ただでさえオメガばかりなのだ。しかも、ファンだという若い娘。そばにいて、心が揺らいだりはしないだろうか。
――最近、Hもしてないしな……。
父親の死の真相がようやくわかりかけてきたこの頃、蘭は夜中まで調査にかかりきりなのだ。陽介はそれを察してか、強引に求めることはしてこない。だが、欲求不満なのは事実だろう……。
「もう! 蘭が及び腰なら、僕が偵察するよ。自分の代替で入った子だから、何か責任も感じるしさ」
妙に律儀なところのある悠は、大きくうなずいたのだった。
ともだちにシェアしよう!