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第3話

 数日後、蘭は朝から大量のほうれん草をゆでていた。  あの後悠が調べたところによると、サラダの作り手はやはり代替で雇われた女の子だった。悠が問い詰めると、『陽介先生のお弁当って野菜が少ないから、心配で』などとしれっと答えたのだという。悠に非難されても、『私はただ先生のお身体が心配なだけ』と繰り返し、開き直っているのだという。おまけに、サラダの差し入れは毎日に及んでいるらしい。 『ああいう若い子って、何考えてんのかな。悪いことしてると思ってないんだよね』  悠は、我が事のようにプリプリと腹を立てていた。もちろん蘭の怒りは、それ以上だった。  ――嫁は俺だ。出しゃばるんじゃねえ!  ただ確かに、肉好きの陽介の好みを考慮して、肉中心の弁当になっていたのは確かだ。栄養が偏っていると言われても、仕方ない。  ――野菜を入れりゃいいんだろ、入れりゃ! 押し付けられたサラダを素直に食べている陽介にも、腹が立つ。まさかとは思うが、浮気心でも芽生えてやしないか、と勘ぐりたくなってきた。 「はい、今日の弁当」  ほうれん草のごま和えが三分の二を占める弁当箱を手渡すと、陽介はやや当惑した顔をした。 「……あの、蘭。今日も、その、野菜中心なんだろうか?」  その言葉に、蘭はカッとなった。 「だって、その方がいいんだろ。俺は、お前の栄養のことを考えてんだよ!」  ふと、陽介の表情が変わった。

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