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第10話 仲間ができました。

「なぁ、おまえさ、まだ俺のこと喰おうと思うかい?。縄張り荒らしたことが許せないかい?。」  俺は、腹這いで寝ている野犬の背中を撫でながら話を続けた。  目を閉じていた野犬が、目を開けてこちらに顔を向けてきた。 「俺さ、さっきも言ったけど、好きでここにいるわけじゃないんだ。俺だって帰りたいんだ。帰り道さえ分かれば、2度とここには来ないし、ここのことは誰にも言わない。」  犬はじっと、こちらを見ている。しっぽも振らない。 「もちろん、車が邪魔だっていうなら、車も退けるよ。でも、それには俺一人の力じゃ無理だから、誰かしら人を呼ぶことになるけれど。」 「俺がここを出るの許してくれる?。」 「グルルルルっ。」  野犬が唸って俺を見る。だ、ダメなのか? 「車の処分を先にしろってことか?。」  車を指しながら、腕をクロスしてバツマークを作ってみる。  …寝たふりしてるし。 「もしかして、俺と一緒にいたい?。あのべろべろ攻撃は、ボディートークだったとか?って、ぶっ。」  ボスンと、野犬は俺の頭の上に自分の頭部を乗せてくる。  お、怒ってるのか?、喜んでいるのか?、どっちだ?。 「お、おまえね。重たいし、それ、失礼だからな。」  両手を伸ばして、耳下辺りをもふもふしてやる。 「俺と一緒にいたいってことこか?。」  野犬は俺の頬をペロッと舐める。  喜んでるっぽいな?。 「おまえが、俺のこと食べたり怒ったりしないなら、脱出した後、週末にでも遊びに来るよ。」  フン~と、鼻息が聞こえる。  あれ?それはあんまり歓迎されないのか?。 「分かったよ、遊びには来ないから、脱出するまで一緒によろしく?」  フシューと、さっきより長めの鼻息が聞こえた。  なんだよ?、その諦めた感じの息づかいは。  まぁ、そんなわけで若干意思のすれ違いはありそうだけれど、なんとか交渉できて、俺には野犬の仲間ができた。と、思う(汗)  * * *  俺は、どこかに落としてしまったキャップと銀様(野犬)の近くに落ちてたバックパックを回収してから、時間を確認した。  と、言っても、キャップは銀様(野犬)が見つけてくれたから、さほど時間のロスはない。  他の装備も確認して、仕切り直すことにした。  何より今度は、頼もしい?銀様がいる。  銀様とは、俺がつけたこの野犬の名前。  名前を決める時、この素晴らしい毛並みとその態度から「銀様」一択と、俺が命名した。銀様は鼻息をフシューッと吐いて、諦めた感満載だったが…。 「では、いざ行かん!、南側ルート探検へ!!。」 「ウォン。」  俺が南の方角を指で示すと、銀様が俺の指を頭で押して西の方角へ向かわせようとする。 「なんだよ、銀様。西から探検したいのか?」 「グルル。」  そう言えば、銀様は西の方角から現れたな。もしかしたら、そっちに人が住んでいるのかもしれない。 「じゃ、西に行こう!!。」  再び気持ちを仕切り直して、西に向かうことにした。  俺の後を銀様が進む。  時折、方位磁針で方向を確認したり、時計で時間を確認したり、蔓や枯れ枝を目印になるようにナイフで加工したりする俺の姿を、銀様はジーと見ている。  巨木を出発したのは9時をだいぶ過ぎたころだった。12時まで下ってお昼を食べたら、また桜の巨木のところに戻る計画だ。  俺たちの探検はとても順調だった。万が一クマに遭遇しても、銀様が何とかしてくれるんじゃないか。そんな安心感もあったんだ。

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