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第24話 洞窟の主
洞窟の中を進んで行くと広場に出た。
光苔の群生地域なのだろうか?
ライトがなくてもなんとかなりそうで、ライトを切る。
時刻は17時を回ったところ。
俺は休息を取ることにした。
バックパックの中の携帯食料と水を摂る。
銀様がブドウを採ってきてくれた時に、補給をしておいて本当に良かった。
燕尾服のおじいさん達も、俺の荷物を処分しないで近くに置いておいてくれるなんて、ちょっと危機管理が心配になるけれど、実は良い人達だよな。
ナイフやザイルロープを見たら、俺だったら没収する。
俺のこと、成人していない子どもだと思われたのが幸いしたのかな。
ポチャーンと音がして、近くに水があることが分かる。
この水、汲むべきかやめるべきか。
そんなことを思っていると、フワンと何か薫ってきた。
何の匂いだろう?。と、思っていると、だんだん背中がぞわぞわしてくる。
これは、やばいやつだ。
銀様やサルや鷹と会った時と似ている。
ここから、逃げなくてはいけないと、頭の中で警鐘が鳴る。
「はっ、はっ、はっ。」
だんだん自分の息が上がり、身体が熱くなる。
もう、嫌だ。何だよこの感覚。いつもろくなことにはならない。
俺は匂いから逃げたくて、洞窟を出ることにした。
「う。」
戻る道の向こうにも、やばいやつがいる気配がする。挟み撃ちにされてしまう。
俺の心臓と息が乱れて、身動きが取れない。
たまらずそこにしゃがみこみ、熱くなってしまった、おへその辺りを触る。俺のあれも硬くなりはじめている。
俺、深く考えたくなかったけれど、やっぱり誰彼構わず発情してしまうんだな。しかも獣にまで…。
俺、銀様に発情してたのか?。あのサルにも?。
発情ってなんだよ。俺は人間で。
匂いで発情するとか、どこのAV設定だよ。
てか、男同士とか、獣の銀様だって雄だろう??
何で女の子が相手じゃないんだよ。どうせなら、女の子を所望する!。
異世界に転移した特典が誰とでもエッチって…。
しかも人外もあり♥️ 。
……。
………。
そんなんいらんし!。そんなんいらんし!!。
俺の将来のビジョンは、優しくてかわいい女の子と結婚して、子どもを育てて、孫に囲まれて。いたって普通なんだぞ!。
匂いが濃くなる。ぞわぞわの気配が近づいてきた。
嫌だ、怖い。
俺はもう、息をするのが必死で姿勢を保てない。
先に追い付いてきたのは、洞窟の奥に居た奴だった。大きな翼の羽ばたきが聞こえる。
「ギギギッ」
重そうな音と共に近くに着地したようだった。
俺は身体が熱くて、うつ伏せたまま、頭も身体も、冷たい地面から離れてくれない。
「はっ、はっ、はっ。」
背後から近づき俺に触る。
「い、…、こほっ。」
何者かに、ごろんと転がされて、仰向けにされた。
「ぐ。」
俺は、音からあの鷹のように大きい鳥かと思っていたけれど、俺を見下ろしているのは、多分人間だ。ここは薄暗い上に、俺からは逆光で顔の判別がつかない。
俺を見下ろしていたその人は、俺のおなかに足を乗せて、力を加えた。
俺のおなかが沈み、息も吐き出されて、吸えなくなる。
息が十分に吸えず、俺の身体が痙攣してひくひくとする。
俺、このまま殺されるんだろうか。
不意に力が弱まるので、身体が反射的に空気を吸い込み、むせる。
ぞわぞわするあの匂いが、俺の肺の中いっぱいに入ってきて不快だ。
その人はそれを数回繰り返す。
俺の身体も、あそこも、ますます熱くなり、硬くなる。
くそー、殺人鬼相手に、情けないぞ。俺。
「は、ぁ、は、ぁ。こほっ、ぁ。」
酸欠で視界がチカチカし、指先がピリピリするし、頭が痛い。
俺を殺すなら、一思いに死なせてくれ。
「い、…、…、ゃら。ごほっ。」
その人は俺を片手で小脇に担いだ。
俺をどこかに連れて行こうとしているのか?。
身体が密着する不快感が我慢できず、吐き気がしてくる。
俺はやめさせたいのに、その体温が不快で吐き気を押さえるので精一杯だった。
その時、もうひとつの匂いが濃くなり、人の気配がした。
「ピルルルルル、クルルルル。」
あれ、人の気配だと思ったのに、鳥の鳴き声?。
「クル、ピル。」
な、なんと、俺を担いでいるこの人も、鳥の鳴き真似、めっちゃうまい。
「ピルルル。クルルル。クルルルルル。」
「ピル、クル。クル。」
二人?は、鳥の鳴き真似のやり取りをしたあと、俺をもう一人の方に渡す。
う、もう一人の方に貰われても、この不快感は変わらないな。
結局吐き気も我慢できず、俺は盛大に吐いてしまった。
「ピルルルルル!、クルルルルル!、ピリリリリ。」
俺を貰った方の人が慌てているみたいだけど、翼の羽ばたきの音とともにあの不快な匂いが一人分遠退いてくれて、俺は内心ほっとした。
まぁ、残っているこの匂いや体温も不快なんだけど、意識が遠退きはじめたし、どうしようもないよね。
「ご、…、な、…、い。」
取り敢えず、俺の嘔吐物で俺もこの人も汚れてしまったと思うから、最後の力を振り絞り、謝ることができたと思う。
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