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第27話 再会
「だから、悪かったって謝っているでしょう。」
「神子が自決寸前だったんだぞ。そこまで追い込むようなことを、貴方がした事実は変わらない。」
誰かの話し声が聞こえる。
俺の好きな匂いがする。まだあの人の夢を見ているのかな。でも、あの人って誰だっけ?。
「そこはねぇ。本当にすまないと思っていますよ。
私とサイラスの気に誘発されて、神子様が嘔吐してしまったから、手っ取り早くお風呂に入れてみたら…。
失敗でしたねぇ。それはそれは可愛くてねぇ…。
ほらほら、そんな目で私をにらみ殺そうとしないでください。
ツヴァイルやサイラスから、こうして保護してあげたのだから、それで手打ちにしましょう。」
「神子との記憶を全て抹消して貰おうか。」
「貴方ね…。心狭すぎじゃないですか。」
「それにしても、難儀な呪いを受けましたねぇ。人の姿に戻れるタイミングは不明なのですか?。」
「あぁ、神子に出会うまでは、人に戻れるとも思っていなかったからな。」
「いずれにしろ、呪いを解かなければなりますまい。」
「呪いは解くさ。神子といるためにな。だが、それ以外は、なにも変わらないさ。」
「何をおっしゃいますか。廃嫡を撤回しなければ他の者に神子様を取られますぞ。」
「俺を焚き付けてもムダだよ。
それより、俺のことは神子には内密に頼む。」
「まぁ、今はそう言うことにしておきましょうかね。私も眠れる獅子を起こしたくはありませんからねぇ。」
「ふ、相変わらず喰えない御仁だな。」
俺はまだ夢を見てるのかな?
意識が浮上しては、沈み、起きているのか寝ているのか分からない。
分からないけれど、俺を包んでくれる匂いと温かな体温や、俺の頭を優しく撫でてくれる大きな手の温もりが心地よくて、このままずっとまどろんでいたいなぁと思ってしまうんだ。
* * *
「やぁ、起きたかい。可愛い子。」
俺の耳に、聞きたくない変態おじさんの声が響く。
俺、寝ているし。見れば分かるよね。
「ふふふ、そんな反抗も、とても愛らしいね。」
「グルルルル。」
「おやおや、西の殿下はご機嫌斜めかい。」
「グルルルル。」
「やれやれ、つれないねぇ。」
え、今の声、銀様?。
俺は飛び起きる。
「おや、お姫様のお目覚めだね。」
「ウォン。」
俺の寝癖を直そうとした茶髪パーマの変態おじさんの手を、銀様が威嚇して払ってくれた。
「あ、ぎ、!。」
俺は、銀様との再会が嬉しくて、銀様の首筋に抱きついた。銀様のつやつやの毛並みが頬に当たって心地良い。
俺はそのまま、銀様の毛をもふもふする。
「ウンウン、感動の再会。心が熱くなるねぇ。」
本当にそう思ってるの?。
俺はじとっと、変態おじさんを見つめると、銀様が俺の頬をペロッと舐めた。
ところで、ここは何処だ?。洞窟のなか?。
俺はキョロキョロと辺りを見回す。
ヨーロッパと言うよりはこじんまりとしたカントリー?な雰囲気の部屋だ。俺的には、好感がもてる。
銀様がまた俺の頬をペロッと舐めた。
もー、銀様、舐めすぎ。と、思いつつ、お返しとばかりに銀様の肩の辺りをもふもふする。
「ふふふ、ここは私の屋敷だよ。
子猫が迷ってきたから、私が保護をしたんだけどね、そこの御仁が引き取りに来たので、やむなくお返ししたのだよ。」
「グルルルル。」
「ふふふ、昨日の出会いは私にとって、忘れがたい素敵なものだったですねぇ。」
目を閉じて記憶を反芻しているであろう、変態おじさん。その記憶、抹消してくれ。
「グルルルル。」
銀様の唸り声と共に、急に気温が下がった気がする。
「いやはや、熱に浮かされながらも、必死に抵抗するその気の強さ、色っぽさ、実に官能て…」
「ガウッ、ワウ、ワウ!。」
「はぅ、ぅ、、ごほっ、ごほっ。」
銀様が吠え、俺もそれ以上聞いていられなくて、おじさんの言葉を遮ろうとして、むせてしまった。
「おや、可愛い人。声が出ないのかい?。
なるほど、それで昨夜は私の誘いを否定しなかったんだね。」
「やっ!、っ、ごほっ、こほっ。」
いやいや!否定したよね?。止めてって、全身で拒否したよね?
俺は真っ赤になって、首を左右に振りまくる。
「グルルルル。ウォン!。ウォォォン!。」
銀様が俺とおじさんの間に飛び出し、吠え始める。
ありがとう銀様、俺をかばってくれて。
「くくく。
あの西の殿下が、くくくくく。」
銀様がこんなに吠え立てているのに、おじさんは全然怖くないみたいだ。それどころか、笑いをこらえて、銀様をいなしている。
おじさんって、怪しい変な印象があるけれど、実はすごい人なのだろうか?。
西の殿下って誰のこと?。銀様のこと?。あだ名や通り名なのかな?。
「改めて、私は北の奥院の主、名前をオルセラン・デ・ヴァイデルと申します。オルさんと親しみを込めて呼んでください、子猫ちゃん 。」
茶髪パーマの変態おじさん改め、オルさんは、俺の手を取るとウインクをしながら甲にキスをした。
「!、ひぇっ」
俺の手や身体に鳥肌が立つ。
「ガウガウガウ。」
銀様が吠えても、オルさんはにこにこしていた。
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