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第31話 ○と△でできている?

「見つけた!。逃亡者発見!!。」  甲高い声に、俺は絶望感から身体が震え、動けなくなってしまった。 「グォン!!、ウォン、ウォン!!」  銀様が俺に向かって吠える。  頭を進路に向け、尻尾が俺を呼んでいるようだ。  まるで構わず走れって励ましてくれているみたいだ。  俺の身体、動け!  俺は再び山を登る。 「ちょっ!。動くな。止まれ!!。」  甲高い声が叫ぶけれど、姿がない。  姿が見えないのを良いことに、移動を続ける。だって、銀様に置いていかれちゃうから。  パサパサッと鳥の羽ばたきが聞こえ、近くにいる気配を感じる。  洞窟のところで聞いた羽音は大きな鳥を想像できたけれど、この鳥は多分小さめだろう。 「ウォン!!」 「ピャ!」  銀様の声と共に光が走った。  眩しくて目を閉じると、誰かの悲鳴と共に頭の上にボスンとなにかが落ちてきた。 「いったーっ。」  俺のキャップの上に落ちてきたのはドッジボールくらいの大きさと形の鳥だった。 「うっわ、可愛い~。」  その鳥は、まんまるで、お腹は真っ白、背中側が茶色かったり黒かったりしていて、黒い尻羽は身体と同じくらいの長さがある。 「こ、これは、あれだ!見たことある。シマエナガだよね。でかいけども!。」 「…。」  俺が興奮気味に銀様に同意を求めると、銀様は覚めた目でこちらを見つめていた。  いやいや、銀様。こわもてのお顔が更にこわもてですよ…。 「ピ!。」  シマエナガの目が開いた。 「うぐっ。可愛すぎる。」  なんだこの生き物は。目がつぶら過ぎる。  まん丸だ。くちばしは三角で。  顔が丸と三角でできているっ。  俺が感動していると、シマエナガ改めシマっちが暴れる。  でも、俺はがっしりと両手でホールドしているから、逃れられない。ふふふふふ。 「ピ!、離せっ。離せっ。この無礼者が!!。」  可愛いシマっちから、甲高い声が飛び出してきた。 「うっわ、声出てるよ。どこかにスピーカーついてるのか?。」  俺はシマっちの白い体を眺める。 「こ!。こら!。乱暴に揺するな。」  おー。くちばしから聞こえる。これも魔力で操っているのかな?さすが鳥使いの一族。 「この子どうしようかな。ここに縛り付けておいたら、誰か救助に駆けつけてくれるかな?。」 「な、縛るとか、なんたるハレンチな!!。」 「ハ、ハレンチって。ふふふっ。」  俺はついつい笑ってしまう。 「この痴れ者が!。離せ。災厄の神子ごときが我を触って良いとでも思っておるのか。」 「う、可愛くないこと言い始めた。やっぱりくくってしまおう。」 「わー、まてまて。悪かった。謝る。ごめんなさい。」 「クスクス。素直だなぁ。でも、ごめんね?。俺は追跡されるわけにはいかないから、やっぱりここに吊るしておくね。」 「なっ、騙したな。まてまて、くくるな。我は一人で来たゆえに、こんなところに吊るされたら、発見されずに死んでしまう。」 「えー、中の人に助けてもらえるだろう?。」  俺はシマっちを銀様に預けると、バックパックの中から、ナイフを取り出した。 「ピッ!。」  シマっちが叫ぶ。 「まてまてまて、中の人とはなんじゃ。そんなものはおらぬ。我は1人ぞ。」 「ふーん。」  俺は生返事をしながら、ナイフのカバーを取る。ステンレスの刃が光る。 「ピッ!た、助けてくれ!。  我はクラシマール・ディ・ヴァイデル・ロア・オンデリア。  ここオンデリアの第四王子なるぞ。」 「ふーん。ここの王子はみんな、態度がオレ様なんだな。」  俺は言いながら、蔓を切り落とし、シマっちを縛るロープ代わりを調達する。  蔓と蔓を縛って長い縄にする。 「じゃ、縛るから。なるべく早く駆けつけてもらってね。」  可愛そうだけど、術者にここが知られているだろうから、長居は危険だ。 「わー、人でなしっ。触るでないっ。」 「うん、ごめんね?」  俺はシマっちの両足を揃えて蔓でくくる。なるべく痛くしたくはないけれど、拘束をほどいて追跡されないようにきつく縛る。 「う、うえーん。  やだよ痛いよ。怖いよ。助けてよー。」  急にシマっちがぶるりと震えたと思った瞬間、そこには5歳くらいの、金茶色のくるくるの癖っ毛の、男の子がはだかで泣いていた。 「え?。えぇ?。」  俺は驚きのあまり、言葉が出ない。  まさかの、鳥使いの魔術師(なかのひと)って幼児なのか? 「うえーん。足、痛いよー。」  あっ、足下を見ると、蔓はちぎれていたけれど、この子の両足に赤く縛り痕ができていて、見るからに痛々しい。  俺の職業病が発動するのは仕方ないと思う。 「ごめんな、痛かったな。  痛いの痛いの遠いお山に飛んでいけー。  痛いの痛いの遠いお山に飛んでいけー。」  俺はその子の足をさすりながら、おまじないの言葉を言う。 「おおっ、痛いのが飛んでいったぞ」  男の子が目をキラキラさせて笑顔で俺を見る。 「それは良かったね。」  俺は男の子の目線になるように姿勢を低くして、にっこりと笑顔を返す。  男の子の顔が赤らむ。  あ、裸だからね。さすがに恥ずかしいのかな?オレの着替えが、オルさんの袋セットの中にあったはず。  俺は、男の子に見られないように、俺の着替えのTシャツを取り出すと、それを着せてあげたのだった。

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