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第32話 ここは獣人の世界
「我 の名前はシマっちではなく、クラシマール・ディ・ヴァイデル・ロア・オンデリアと言うんだぞ。ヴァイデル王国の第四王子だぞ。尊き存在なのだぞ。」
「そう、かっこいい名前だね。シマっち何て呼んだら尊き王族に失礼だったよね。
だけど俺には難しくて正式の名前が覚えられそうもないなぁ。せめてクラシマール殿下って呼んでも良いですか?。」
俺が首をかしげなから、聞くと、クラシマール殿下はちょっとためらって、
「…良いぞ。」
と、言ってくれた。良い子だなあ。
あれから、こんな小さい子を森の中に置き去りにできなくて、でも、止まっていたら追手に追い付かれてしまうしで、結局連れて行くことにした。
俺がおんぶして行こうとすると、なぜか銀様が唸るので、クラシマール殿下には自分で飛んで付いてきてもらうことにした。
危機管理!、と自分でも思ったけれど、泣いてる子どもを置いていけないよね。
で、山を登ったりくだったりしながら聞いた、このアースの世界で、驚くべき事実を知ったのだった。
それは、この世界には獣人がいること。
しかも、獣人がほとんどで、俺のような人族は、ほぼいないらしい。
獣人は、普段は人の姿で生活していて、有事の際には獣の姿になり、その特性を活かして行動するみたい。
より獣の姿に変身?できる方が、特性を活かした能力も高くて、故に権力者に多い。逆に獣に変身できない人は特性が活かしにくく能力が低く、身体も弱くて、下層民?に多いらしい。
なのに、獣人はより人に近い方が尊敬され、耳や尻尾がしまえない人は、蔑まれる。
じゃぁ、獣に変身できない人がいるのかと思えば、人族以外は変身できるんだって。
特性を活かす能力なんて、獣になればみんな備わっていそうなのにな。
なんだか理不尽に感じられて、質問するけれど、クラシマール殿下には、それが「常識」なんだって。そうなのかなぁ??
俺が更にビックリしたのは、あの巨大な鷹は金髪ロン毛男 自身だったってことだ。
俺、ロープで足縛って倒しちゃったよな。道理でめっちゃ怒ってた訳だわ…。
じゃ、オルさんも…
「ねぇ、クラシマール殿下。オルさんも何かの獣人だよね?。」
「オルさん?。」
「あ、えっと、オルセラン…様?。」
敬称に何をつけて良いのかわからない、ダメな俺。
「…、…、我のことも、シマ君と、呼んで良いぞ。」
「え、ありがとう。じゃ、シマ君って呼ばせてもらうね。」
「ウム。」
羽を懸命に動かして、可愛いなぁ。俺はお礼の気持ちを込めて、微笑みを向けた。
「で、オルさんは、何の獣人なのかな?」
「叔父上は、フクロウだぞ。」
「!。
なるほどね~。」
俺は勝手にコウモリをイメージしていた。なぜならばあれだよ、あの革袋のマーク。てっきりコウモリと思っていたけれど、実は、フクロウだったのか…。
「じゃ、じゃあさぁ。」
別に内緒話をしようと思ったわけではないけれど、声を潜めてしまう。
銀様も、獣人なのだろうか?
俺たちの言葉を理解しているみたいだし、とても頭が良い。
銀様が獣人だったら、人間の姿を見てみたい。
「うん?。なんじゃ?。」
「えっと、ぎ、銀様って…。」
「?。良く聞こえんよ。」
「…、…、いや!。なんでもないよ。」
やめた。銀様のことを、人から聞くのって、ちょっと違うよね。自分で銀様のことを知っていきたい。俺はそう思い直して、再び前進することに専念することにした。
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