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第35話 旅の仲間

「はい、はい、君たち、もうこの辺でやめてあげなさいね。」 「あ、オルさん。」  護衛さん?達の後ろから現れたのはオルさんだった。  ちょっとだらけ気味だった護衛さん達の背中が伸び、顔も引き締まった気がする。  オルさんって、ツヴァイルの叔父さんだけあって、やっぱり偉いんだな…。 「やぁ、可愛いお人。昨日ぶりだね。元気にしてたかね?。」 「オル、セラン様?」  俺は、何て答えて言いか分からない。 「あぁ、オルさんと呼んでくれて構わないよ。昨日、あれからツヴァイルと話をしてね。  そうしたら、これが、きちんと神子様のことを番にしたいと考えていてね。  どうだろうね、この不肖の甥も一緒に桜の宮様のところに連れていってはくれないかい?。」 「グルルルルルッ。」  俺がなにか言うより、銀様の方が思いっきり威嚇している。きっと嫌なんだろうなぁ。 「申し訳ありません。俺…、私は相手の言い分を聞かずに暴力を振るう人とは、仲良くなれそうにありません。  それに、銀様が嫌がっていますので、一緒には無理かと思います。」  俺は、頭を下げながらお断りをする。 「うむ、まぁそうだろうねぇ。  たが、西の御仁。どうだろうか?。神域に入るとは言え、犬族、猿族、鬼族も災厄の神子争奪戦に参戦するために動いていますよ。あなた一人では守りきれないんじゃないですか?」 「グググ。」  銀様が唸る。ツヴァイルは口を結んで頑なにこちらを見ないでいる。  オルさん、相変わらずさらっと爆弾を投下してくれる。きぞくってなんだ?。貴族ならまだしも鬼族とか居るのか?。獣人の世界じゃなかったのか?。犬族は、狼族とは違うのだろうか?。 「ふつつかな甥ですが、それでも番候補者の一人。神子様をお守りするにはうってつけではありませんかな?  神子様との出会いのタイミングが最悪だったのですよ。いろいろと誤解は説いたんですけどねぇ。もう一度、やり直しのチャンスをあげてはくれませんかね?。」 「ですが私は、番にはなりませんよ。私は男ですから。  帰る方法を聞きに、桜の宮へ行くだけなんですよ。」 「それも人生の選択。神子様がそれを望むなら、それはそれで構いませんよ。」  オルさんがウインクをしながら優しく微笑んでくれるのがちょっと嬉しい。 「実を言いますと、ひとつ心配なことがあります。  神子様の出現と、その情報の伝達があまりにも速い。通例でいけば、五大神に召喚を依頼した国は、神子様を横取りされないように内密にします。ましてや災厄の神子の存在がこれほど早く伝わるのは異例です。さらには、ツヴァイルのように、何故か皆、一様に災厄の神子に良い印象を持っていません。事例は少ないとは言え、これはさすがに異常です。  誰が、どのような目的で、あなた様を召喚したのか、どの国なのか。も、全くの謎なのですよ。  助けは多い方が良いでしょう。どうか、この未熟な甥ではありますが、あなた様の盾として連れていってください。」 「ですが…。」 「では、仕方がない。不肖この私が…!。」  尚も食い下がろうとするオルさん、本当に心配してくれているんだな。 「良い。俺が自分で言う。  おい、神子。叩いたり、怒鳴ったりして、悪かった。と、思っている。  これからは、お前が嫌がることはしない。ように気を付ける。俺も、桜の宮へ連れていってくれ。」  そう言って、ツヴァイルは頭を下げた。  おぉ、この人、ちゃんと謝れるんだな。 「分かりました。えっと、ツヴァイル…様の謝罪は受けとります。  私の話をきちんと聞いてくださるなら、そして銀様が良いと言うなら、一緒に行きましょう。」  銀様を見る。  銀様は、不機嫌そうに尻尾を、パシン、パシンと動かしていたけれど、俺と目があった時に、フンスと鼻息を漏らし、ツヴァイルを受け入れてくれたようだった。 「俺のことは、ツヴァイルで良い。かしこまったしゃべり方もしなくても良い。」  ツヴァイルさんが、そっぽを向きながら…。 「だーから、さんも付けなくて良い!。」  俺の心が読めるのか? 「若、良かったっすねー。一歩前進ですね。」 「いやいや、言葉遣いを丁寧にされて密かに傷ついちゃってるね。」 「ばっか、それは指摘しちゃあ、可哀想だろう。」 「うるさーーいっ。いいから、お前らもう帰れっ!。」 「さあ、さあ、固い話しはここまでです。神子様、私との会話も普通にしてくれて良いのですからね。」  こうして俺達の旅の仲間が一人増えたのだった。  だ、大丈夫なのだろうか…。

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