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エピローグ
これが、『災厄の神子』の俺と『呪われた王子』のレオとの出会い。
まだ、異世界に来たばかりで、右も左も分からなかった俺と、全てをおざなりに受け入れていたレオ。
最初は怖かったけれど、レオこと銀様の優しさに触れ、俺はだんだん銀様を信頼するようになった。
銀様といると、心が温かくなって、もっと一緒にいたいと思ってしまう。
でも、それが、本当に信頼なのか依存なのか俺には分からない。
俺の出逢った獣人たちは、俺を災厄の神子だからと言ってとても嫌っていた。時に暴力を振るわれ、災厄の神子から力の付与を奪取しようとしてきた。
俺だってそんな横暴な獣人なんて嫌いだし、俺のできうる限りの力で抵抗した。でも、力ではかなわなくていつも銀様に助けて貰うばかりのダメな俺なんだけどさ。
そんな獣人たちも、話せば俺に友好的に接してくれて、一概に悪い奴らとは言えず、むしろ親しみやすい人達で、俺は知らず知らずのうちに、獣人たちとも仲良くなっていった。
旅の目的でもあった桜の宮で、俺は異世界からの帰り方を、銀様は呪いの解き方を教えてもらったのだけれど、俺の願いはあっけなく叶わず、銀様の呪いは二重にかけられていることが分かり、まだまだ解くのは難しそうだった。
レオは俺を好きと言ってくれる。番にしたいって。でもさ、それは俺が災厄の神子で力の付与ができるって言うメリットがあるわけで。
レオはそれとこれは違うって言うけれど、そうかもしれないけれど。
じゃあ俺は?
レオを好きって気持ちは、依存から来ているのかもしれないだろ?
だって俺、異世界に来る前も今も普通に女の子が好きで、将来は可愛いお嫁さんをもらうって思っているしね。
それに、これは母さんから教えてもらったんだけれど、この世界は、一夫多妻や一妻多夫が当たり前なんだって。
番のことは大切、でも、他の人も好き。好きなものを大切にする。そんな愛?恋?多き獣人達の恋愛事情に俺はちょっと馴染めそうにない。
でも、俺はこのアースの世界で生きるって決めたんだ。
まずはレオの呪いを解いて貰うために、レオと一緒に四大神をめぐる旅に出ることにしたんだ。
旅立ち前の数日間。俺は桜の宮でレオと一緒に、旅に必要なものなど教わりながら準備をした。
たくさん話をし、魔法のコツも教わりながら、のんびりと過ごしたこの数日間は、とても楽しくてあっという間に過ぎてしまった。
明日はいよいよ旅立ちの日。
先のことなんてわからない。
でも、ちょっと先の未来で、呪いの解かれたレオと一緒に、また笑いながらのんびり休日を過ごしたい。
そのために、俺はがんばりたいって思うし、そう思うと、心が温かくなってやる気に満ちてくる。
ふわりと、俺の好きな匂いが香る。獣姿の銀様が俺の隣ですやすやと眠っている。俺も艶々の銀色の毛皮に体を預け、もう一度寝の体勢をとると、銀様は器用に俺の頬を舐めた。
「銀様、おきてたの?。明日はいよいよ出発だね。足手まといな俺だけど、これからもよろしくね。」
〔ふふ。足手まといじゃないぞ。俺がお前と一緒にいたいんだ。俺の事情に付き合わせて申し訳ないが、よろしくな。〕
そう言って、銀様は俺の頬を舐め、鼻を舐め、唇を舐める。唇の隙間をぬって、銀様の大きな舌が俺の口のなかに入ってきて、口蓋や舌を擦る。
「わわっ。あ、あ、口の中は、あ、だ、だめだってば。ん、ん。」
も、もう!。口のなかはやめてって言っているのにっ。
そ、そう言う訳だから、新たな俺たちの旅のお話は、こ、これからも、つ、続くからね。
第一章 災厄の神子と呪われた王子 完
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