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第2話
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「どうせなら彼らと同じホテルにしましょう」という野原の提案で、披露宴が行われた場所に戻ってきた。
男ふたりの宿泊を訝しまれたらどうしようと及び腰の西岡をよそに、野原は堂々とチェックインの手続きをしている。繊細そうな見た目と違い案外胆が座った性格らしい。もっとも、フォーマルスーツに寿丸出しの紙袋。三次会流れと思ってもらえば、このクソ邪魔な引き出物も役に立ったということだ。
カードキーを差し込み、扉が閉まるまでふたりとも無言だった。困ったな……。今さら逃げ出したいような気持ちに西岡の眉が下がる。
「シャワー、先に浴びてもいいですか?」
そんな西岡の気持ちをよそに、ビジネスライクにも思える冷静さで野原はシャワールームに消えていった。
「ふぅ……、変な展開になっちまったな」
チェストに置かれた二つの紙袋を横目にぼんやりしていると、バスローブ姿の野原が俯きがちに戻ってきた。
「お先にいただきました」
シャワーで勢いまで流してしまったのか、バーで詰まった距離感がぐっと広がってしまった様子は、西岡を途方に暮れさせる。これからセックスするってのにこの距離感、どうすんだ。
必要以上に丁寧に体を洗い、時間稼ぎも限界としぶしぶ戻れば、明かりの落ちた部屋に野原のシルエットが浮かんでいた。
「えっと……、野原さん、どっち?」
「え?」
「いや、上か下かってこと」
「ああ……えぇと、僕、初めてなもので、あのぅ……」
叱られた子供のようにシュンと萎れた野原が告げた言葉に、困惑はマックスに達した。まさかの童貞? なのにあの大胆発言? どうしたの、この人?
「すみません。あの、初めてですけど頑張りますから、えっと、西岡さんの好きなようにしてください」
「いや、でも、初体験の相手が今日出会ったばかりの俺でいいわけ?」
震えるような深呼吸をした野原の両手が、バスローブの上でギュッと固く結ばれている。
「いいんです。僕、今日は新婦側として披露宴に呼ばれたんです。同期なのに……、僕はずっと彼が好きだったのに、話しかけて親しくなる勇気もないままに終わってしまった。後悔しています。だから僕は変わりたい。勇気のない自分を捨てたい」
絞り出すような告白に、西岡はなにも言葉にできなかった。返事を返す代わりに、野原をそっとベッドへと押し倒した。
「俺はどっちでもいける人だから、野原さんは俺の下でただ身をゆだねてくれればいいよ。セックスしよう。あいつらに負けないような」
潤んだ目元には気づかないふりで、西岡はバスローブをゆっくりと開いていった。
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