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第4話

*****  喉の乾きに目が覚めて体を動かすと、丸まるように西岡の胸に収まっていた野原のまぶたがふるりと震えた。 「ごめん、起こしたな」  ゆっくりと焦点の合った瞳が西岡を認めると、途端に爆発したように赤くなる。可愛い。 「な、何時ですかね?」  ベッドサイドの時計は、まだ夜明け前を指している。 「腹へったな」 「ルームサービスでも取りますか?」  照れくささを隠すようにモソモソを起き上がった野原は、引き出物の紙袋を覗きこむと四角い箱を取り出した。 「これ、食べません?」  ピンク色のラッピングをバリバリとはがせば、恥ずかしくなるような引き菓子が現れた。 「バウムクーヘン……、しかもハート型って」  包み紙と同じようにピンク色に着色されたそれに野原はガブリと噛みつくと、口いっぱいに頬張ったまま西岡の紙袋から同じものを出して差し出す。  向かい合って胸焼けするほど甘い焼き菓子を食べていると、どちらからともなく笑いが込み上げてきた。 「ぷぷぷ、なにやってんだろな、俺たち」 「柄にもなく嫁の趣味に合わせたメルヘンチックな引き出物を恥ずかしげもなくばらまいた男を笑いながらセックスしてます」 「なにそれ」  ひとしきり笑って、どちらからともなくキスをした。唇も舌も、とろけるように甘い。  食べかけのバウムクーヘンを放り出して、ふたりは再びベッドに沈む。初夜を迎えたカップルに負けないように。甘く、濃厚に。

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