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喧嘩_2
秋はまもなく終わりを迎え、冬が顔を出し始めるこの時期。毛布一枚羽織っただけで玄関に居座るのは、とても寒い。だけど俺は動けず、ずっとそのドアが開くのを待っている。
どこ行っちゃったんだろう……。もう帰ってきてくれないのかな……。
「…………美影…………」
朝方には止まった涙も油断すればまた溢れそうになる。
スマホも繋がらない。探しに行きたいけど、家を出るなと言われた手前動けない。俺はただここで待つしか出来ない。
「……大丈夫、待つなんて慣れてる。四年間ずっと追いかけたんだ。このぐらい全然待てる」
膝を抱えた姿勢のまま時間だけは虚しく過ぎていく。
昼食も取る気にならず、時計の針を見送った。
流れる静寂が破られたのは夕方に差し掛かった頃。部屋に響いたのはインターフォンの音だった。
俺は瞬時に目の前のドアに飛びついて、何も考えずに勢いよくそれを開いた。
「――美影!」
「――わっ、と……危ないって、急に出てくるなよ」
「あ…………臣、海……?」
ドアの外には美影と似てるけど美影じゃない、弟の臣海が呆れ眼で立っていた。
「悪かったね、兄さんじゃなくて」
「臣海兄さん、拗ねないの。浅井くん、久し振りだね」
臣海だけじゃなく隣には千歌ちゃんも……。
よく考えれば美影ならインターフォンなんてわざわざ鳴らさない。
「あ、ごめ……ビックリさせて……。二人とも久し振り」
大学生になった臣海と、中学生になった千歌ちゃん。二人ともさすが美影の弟と妹だなと思うぐらい美男美女に成長してる。
「えっと……美影に用事だった?それならごめん、今出掛けてて……」
「……違うよ。アンタに会いに来た」
「え、あ、……何か約束してたっけ?」
最近は忙しくて連絡も取ってなかったはず……。
戸惑う俺に臣海と千歌ちゃんは二人で目を合わせ、臣海に至っては溜息を溢す始末。
「とりあえず中入れてくんない?」
伸びてきた臣海の手が俺の頬に触れて、また一つ溜息を落とされる。
「…………こんなに身体冷やして何やってんだか」
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