8 / 10
喧嘩_5
「え?何?どう言う事……?」
「まーだ分かんないの?鈍っ」
「うっ…………」
「全く…………。じゃあ言うけどそこまで仲良くない会社の後輩が、何でこのマンション知ってんの?」
「…………」
確かに。言われてみれば……。
美影との喧嘩ですっかり失念してた。
「……何で知ってたんだろ?告るために後ろついて来てたとか?」
「ついて来てたらマンションの前で待ってないだろ」
「ん?じゃあ何で……」
「だから事前に知ってたんだろ。所謂ストーカーされてたんだよ、アンタ」
ストーカー……って俺の?美影じゃなくて?
「いやいや、まさか」
なんて笑う俺に向けられるのは二人分の哀れな視線。
「…………でも何でβだって分かったんだ?」
「そりゃ分かるよ。兄さんの事だし、どうせ…………なあ、千歌?」
話を振られた千歌ちゃんは、俺と目を合わせるなり困ったように笑う。
「うん。私ね、正式な検査はまだしてないんだけど多分αなの。だから分かるんだ……浅井くんっていつも美影兄さんの匂いさせてるって。正直普通のαの人なら絶対近付きたくないと思う」
「え…………」
そう言えば昔、字見にも似たようなこと言われたような。
「βの俺には何も感じない。だから命知らずな馬鹿はβかΩの二択ってわけ」
「その二択での決定打は?」
「勘」
「勘…………」
「まあ、何となくΩの方がそう言うのに消極的なイメージあったってだけ」
なるほど。
じゃあ美影が怒ってたのは……。
「兄さんはアンタのそう言う疎い所に怒ったんじゃないの?もちろん心配してさ」
「…………」
ともだちにシェアしよう!