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第9章 ホットストリークシステム

    第9章 ホットストリークシステム  秘密基地のおもむきがある入り江に碇泊したクルーザーが今宵の(しとね)で、波音がBGMとくれば舞台装置はロマンチックだ。もっともデッキチェアの上でエッチになだれ込まれては、ロマンチックもへったくれもないけれど。  曰く「ボディトークがふたりの心の垣根を取り払ってくれる」。  鹿爪らしげにそう主張する設楽に説得されて(正しくは丸め込まれて)組み敷かれたのは、古来から船乗りの羅針盤でありつづけたポラリスがひときわ輝きはじめたころ。  つまんで揉んでこね回して、吸ってかじって食みつぶして。それを第一の標的と定めた胸の粒をいじりまくっただけでは飽き足らず、今しも甲板に膝をついた設楽が、ジーンズとひとまとめに下着をむしり取るのも焦れったげに、おれの下肢を割り開きにかかる。 「ここじゃ落ち着かない。ベッドに……」 「夜露に濡れて愛し合うのも、一興だ」  なんて寝言をほざいた口をつねってあげて、にもかかわらず和毛(にこげ)を撫でつけられると果実がはしたなく頭をもたげて……おれは、アオカンにむしろ興奮する性質(たち)だったみたいだ。 「便宜上シャドウと呼ぶが、要するにわたしの分身は、ここをどんなふうに可愛がった」  とはのことで、鷲摑みに握り込まれたペニスが設楽の手の中でじんと疼く。 「もげるって……。もしも自分自身に対抗意識を燃やしてるなら、それってナンセンス」 「滑稽で、けっこうだ」  乳嘴(にゅうし)をくにゅくにゅと悪戯されて、これは案外、ひょっとして、もしかすると……、 「あっちの設楽に妬いてたり、します?」  図星だ。穂先を咬まれた。  花から花へと渡り歩く浮気性にみえて、設楽は根は純愛路線至上主義なのかもしれない。ぶきっちょ、と苦笑がこぼれるやり方で愛情を表現されると我ながら現金ではあるけれど、わだかまりが溶けていく。  とはいえ、あっさり宗旨替えするのも癪だ。 「あなたがシャドウとけなす設楽といちゃついたかなんて、聞くだけ野暮でしょうが」  一刹那、表情がかき消えた(おもて)に邪悪な笑みが広がっていくにしたがって異様なまでに双眸がぎらつきだす。  不吉な予感に縮こまったときには、手遅れだ。へそを折り目に躰をふたつにたたまれて早々に、オリーブオイルをまぶした指が谷間を這い進む。 「や……っ!」  くっ、と蕾を押されて腰がくねり、けれど指は核心には決して沈まない。前哨戦めかしてぐるりにオイルを塗り込めていくさまは丁寧という段階を通り越して執拗で、いけずな指を捉えたがって菊座がひくつく。

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